鶴丸の悪戯の問題が片付いて数日後ーー
「あ―る―じ―さ―ま―」
元気な足音と共に聞こえてきた私を呼ぶに私は筆を置いた。
それとほぼ同時に開いた衾から入って来たのは、今剣。
「あるじさま!おまつりにいきましょう!」
今剣は入ってくるやいなや、楽しそうな声でそう言った。
「祭?」
「はい!えんせいからかえってきたかたたちから、じんじゃでおおきなおまつりをやっているってきいたんです!」
「そう言えば、さっき報告に来た蜻蛉切がそんな事言ってたね」
祭なんて、この本丸に来てから行ってないな。
なんて思っていると、今度は複数の足音と共に控えめに戸が開けられた。
「あ、あの…主さま、お願いがあるんですけど」
「おや、五虎退どうしたの?」
「あ、あの…その…、お、お祭りに行きませんか?」
「…五虎退もか」
「えっ?」
「ごこたいもぼくとおなじですね。
ぼくも、あるじさまをおまつりにさそいにきたんでんす」
可愛い短刀達とお祭りは行きたいけど…、机の上に山積みになっている紙の束に目をやり溜息をついた。
「…今剣、五虎退、悪いけどーー」
「行って来て下さい、主」
「けど、へし部…」
「長谷部君の言う通りだよ。
主はここ最近まともに外に出ていないだろ?
仕事に追われて体調を崩しては、雅じゃないからね」
「…歌仙」
体調を崩すのは雅じゃないって…、歌仙なりに気を使って言ってくれてるのは分かるけど、よく体調を崩す私は雅じゃないって言われてるみたいでグサッときたよ。
まぁ、それは置いといて今は二人の厚意に甘えるとしますか。
「わかった、今日は二人に甘えさせてもらうとするよ」
私がそう言うと、今剣と五虎退は嬉しそうに笑った。
「行ってらっしゃいませ」
「楽しんで来るといい」
そんなわけで私は、久々のお祭りに行く事になった。