〉2月14日
「どうしたものか…」
私は困っていた。
世間はバレンタイン一色で染まっている中、私はひたすらに悩んでいた。
「やっぱり、作らなきゃよかった…」
目の前には綺麗にラッピングされたチョコレートが1つ。
昨日、蘭と園子に巻き込まれ作った所謂“手作りチョコ”と言うやつだ。
作ったのはいいけど、このチョコの行く先は決まってない。
何せ、恋人である赤井秀一は今仕事で日本にいないのだ。
「はぁ…、自分で食べるかな」
「−−俺にくれるんじゃないのか?」
「!?」
聞こえるはずのない声に驚いて振り返ると、数日前と変わらない恋人がいた。
「け、気配消すの止めてって言ったのに!」
「帰って来た恋人に言う言葉がそれとはな。
変わらないな」
「数日で変わるわけないでしょ。
…お帰り、秀一」
「ただいま。
それで?それは俺にくれないのか?」
「……」
私は無言でラッピングを解いて蓋を開けると、チョコを1つ取り出して口に入れた。
そして、そのまま−−
「ん、HappyValentine秀一」
口づけた。
秀一の驚いた顔が可愛くて、私が笑うと少し拗ねたような顔をした後、優しく抱き締められた。
今日は12月25日。
巷はクリスマス一色に染まっている。
おまけに今年は雪も降りホワイトクリスマスだ。
恋人たちは今頃、ケーキでも食べながら仲良く過ごしているだろう。
そんなクリスマスを、今私は恋人がいるにも関わらず一人で過ごしている。
「……クリスマスなんか、大嫌いだー!」
恋人である赤井秀一とは今日、私の部屋で一緒に過ごす約束をしていた。
なのに!時間になっても全く来る気配はない。
メールも電話もしてみたけど応答なし。
デートを仕事ですっぽかされる事はよくある事で馴れてる。
でも、今日は…今日ぐらいは一緒に過ごしたいーーそう思うのは私の我が儘だろうか?
「…もうすぐクリスマスも終わりか……」
時計を見ると0時まで後10分…。
目の前の手付かずの料理を見ると余計に空しくなった。
「寝よ…」
料理にラップをかけ、寝室からブランケットを持ってきてソファーに横になる。
そのままブランケットを頭から被って目を閉じた。
「赤井さんのバカ…」
〉次の日ーー
「え?」
目を覚ますと、そこはソファーではなくベッドで、枕元には可愛くラッピングされた小さな箱が一つ。
ラッピングを解いて出てきたものに私は目を疑った。
「これーー」
「これから先、俺と一緒に生きて欲しい」
「っ!赤井…さん……」
「返事を貰えないか?」
「…クリスマスをひとりで過ごすのは嫌」
「すまなかった」
「これから先、クリスマスを一緒に過ごしてくれるなら」
「約束しよう」
「大好き、赤井さん!」
「愛している」
「私も、愛してる」