執務をしていると、障子のすき間から風と一緒に薄いピンク色の花弁が舞い込んできた。
「…桜」
障子を開けると、満開の桜がでむかえてくれた。
「昨日まではそんなに咲いてなかったのに…」
桜を眺めていると、珍しい客がやってきた。
「大典太もお花見かい?」
普段は出陣がない限り自分から蔵から出ないのに…。
「前田ちゃんに連れ出された?」
「ああ」
「せっかく外に出たんだ、ここにすわりなよ。
一緒にお花見しよう」
「いや…、俺は」
「いいからおいで」
少し強めに言うと大典太は観念したのか、私の近くまで来ると少し間を空けて腰をおろした。
「今年も綺麗に咲いたね」
「そうだな」
「今年は一緒に見れて良かったよ」
去年は蔵にこもって出てきてくれなかったからね。
そんな意味を込めて言うと、大典太は少しすまなそうな顔をした。
「別にいいよ。
来年も一緒にお花見しようね」
「年に1度くらい、桜を見るのも悪くない」
「約束だよ?」
「…ああ」