君の知らない物語

□Riot!!!
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信長さんが呼んでいると、エルフの子供達に呼ばれて外に出た。なるべく多くの絵に色を塗ったつもりだが、あれで足りるだろうか。時間が許すなら次は版画の方が便利だろうか。

「ヨォ〜来たかよすが〜」
「信長さん」
「絵の方は順調か」
「はい、粗方書き終えてます」

そうかそうか、そう言って信長さんは一枚の紙を私に見せた。「えるふ村大釣り大会」、えさは豊久さん。エルフの村の地図にいろいろと線が書かれている。

「…豊久さんで軍隊を釣るんですか?」
「島津の釣り野伏せじゃ、知らんか。こいつがえさで、姿を見せてわざとド真ん中を逃走して敵に追わせ、伏兵が囲んでまぁ相手はお陀仏っつー兵法よ」

1人で相手を引き付けるのか。凄い役目だ。悟られないよう技術も居るだろう。でも想像してみれば、豊久さんなら簡単にやってのけそうだった。

「ところで、私にこの紙を見せたということは私も参加できるんですよね?釣り大会」
「……えさの隣ではないがな。わしの隣じゃ、邪魔にならんよう怪我せんよう、大人しくしておけ」
「あのー、そんなに豊久さんばかり追いかけてるわけじゃないんですが…」
「え〜そぉ〜?」

何だろう、この人。あ、高校にいたなこんな女子、くっつけたがる女子、恋愛大好き女子。あれ、大人だと老婆心とかいうやつ?いやでも信長さん老「爺」心じゃなきゃおかしいか。

「絵、どうすればいいですか」
「念のため描いたやつも持ってけ、狙うのはエルフたちだ。エルフ描いたらあとはお前の好きなだけお豊を…」
「信長さんしつこいって言われたことありません?」
「意外ときびしーなオイ」
「開会はいつです?」
「日が暮れて…夕飯食ったあとだな、夜中だ。眠そうなら昼寝しとけ〜」


じゃな、そう言って信長さんはどこかへ行ってしまった。


戦いの中でもエルフを描くなら、その前の、弓に久しぶりに触れている絵も描いたほうがいいだろう。そう思って私は画材を取りに一旦戻り、森へ向かった。

木に的をかけ練習するエルフたちの弓の腕は、相当なもののようだった。そして、与一君の腕も。彼らは今晩人に向けて矢を射る。なのにその目は輝いていた。


私が戦を描きたい理由と、エルフが弓を好む理由は、同じだろう。
好きだからだ。
惹かれるからだ。
そこになぜという言葉は存在しない、自分でも分からないが好きだからそうしたいのだ。

好きということが、罪になりかねるのだから、不思議なものだ。好きなものこそ上手なれ、とか言うのに。





これは人に対してでも、言えることなのだろうか。





……あるな、禁断の恋とか。主に不倫とか身分違いの恋は、大体悲恋で終わる。


「案外気の向くまま生きるって大変」

森のエルフたちの練習風景をひとまず書き終えると、私はその場をあとにした。
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