君の知らない物語

□外は戦場だよ
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「………島津!!」


「島津豊久!!島津家久が子じゃ」
沈黙。
「島津………?誰?おう!九州の!?はじっこの!?蝦夷までとは言わずも物凄いド田舎の」
「殺す!」
さりげなく地元ディスられた気もするが、まぁこの時代なら仕方ないか。というか今でも田舎は田舎だし。
「島津殿なら私も知っておりまする。私の御世にもおられましたぞ」
今度は変わって与一君。豊久さんも少し興味がわいたのかくるりと振り返る。ナイスだよ、与一君。
「たしか九州のはじっこの方の御方です。ははあ代々田舎の方々なのですね」
「全員殺ス!!先祖代々一族郎党バカにされた!!」
火に油とはこれか。ついに豊久さんが抜刀する。
「いや!でも、私の時代では『島津に暗君なし』って言いますし!島津は強いってイメージありますし!ね!?」
「いめぇ…、それはまことか?」
「まこと、まこと」
このままだと私もぶった切られそうな勢いだ。歴史の先生、小話ありがとう。生徒の命が一つ救われました。2人は豊久さんに少し呆れている。

「信長……と言うたな」
豊久さんの本能寺で死んだのではないか、という質問に信長さんは森蘭丸と逃げ回ってたときに「あの男」と出会ったという。
「私もその男に会いました」
「私もです」
与一君に付け足す様に答える。
「わいもその男にあったぞ!関ヶ原の大戦の退き口の中で!!」
「関ヶ原?」

そうか、信長さんは天下分け目の関ヶ原を知らないんだ。
変わって、今度は豊久さんが本能寺のあとの織田の衰退について答える。私と与一君は基本さっぱりわからない話だ。豊久さんの頃の織田家は家康のお茶汲みをしていたらしい。知らなかったなぁ。

「肉が焼けたで候」
ひと段落ついたところで与一君が鶏肉を火から外す。私は一番小さいのをとる。そうだ。
「おにぎり、いかがです?」
おにぎりがちょうど三つ。普段は2つだけど、残ったご飯がちょうど3つ分だったから多めに作ったのだ。運が良い。
「よすがは食わぬのか」
手渡しをすると、信長さんが聞く。
「鳥丸々1匹で大丈夫ですよ。お二人はお米恋しいだろうし、豊久さんは栄養つけたほうがいいだろうから」
「とはいえ白米なぞ高価なものを…」
与一君は少しびっくりしたようだ。確かに、昔は白米はご馳走だったな。
「私の時代ではご飯といえば白米ですよ」
「このつるつる透けてるのは食物か?」
今度は信長さん。
「それはラップっていいます。食べ物を包んだり、皿の食べ物を保存するために使います。食べれませんよ」
「こん黒いものは何な」
「海苔ですよ、無かったんですか?」
「あおのいといえば生のものだ」
同じ日本でもカルチャーショックてのはあるんだなぁ……まさか海苔までとは。
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