ハイキュー 長編

□憂鬱
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 この姿になってから、毎日が暇で仕方がない。
 
 だって今の俺、しっぽ生えてるし角生えてるし。
 そんな俺が町に出たりなんかしたらみんな大騒ぎしちゃうだろうから外にも行けないし。

 多分俺でもビビるわ。
 やることといったら図書室で本読んだりとか、あとたまにお菓子作ったりとか。

 でも、絶対にやらなくちゃいけないってほどのことでもないので、今日の俺は絶賛ゴロゴロ中。

 恨むよ、ウシワカちゃん。俺をこんな姿にした張本人。


 この城の主であるウシワカちゃんは、長いこと城を留守にしている。

 何やってんのか知らないけど。

 だからこの城には、大王であるこの俺と、召使いしかいない。

 なんでこの大王及川さんがウシワカちゃんの城に住んでいるのかっていうとね。

 んーと。簡単にいうと、俺の親がウシワカちゃんだから。

 や、正確に言うと、人間だった俺を大王に育てたのがウシワカちゃんだから。

 うん、最初からこう言えば良かったね、うへぺろ☆つまり俺、誘拐されてきたの。

 なんでも後継者がいないって言ってて。んなの知ったこっちゃねぇよって感じだったけど、当時小さい男の子だった俺がウシワカちゃんにかなうはずもなく。


 
 こうして城に連れて来られた俺は、きつい大王教育を受けた。

 いやぁ、アレはツラかったツラかった。今思い返しても泣けてくるよ。

 呪文の暗記とか、魔法陣の書き取りとか。あと、実際に戦う魔法決闘実習とか。
 決闘実習以外はどれも嫌だったけれど、一番嫌だったのは…アレだな。
 

 今でもはっきり覚えてる。
 

 結ばされた、大王になるための契約。魔法を
使えるようになるには必須だったらしい。

 その儀式を終えたあと、鏡にうつった自分自身を見て、俺は愕然とした。儀式は凄く痛くて辛くて苦しかったんだけど、あんなの比じゃない。

 先刻まではなかった、頭に生えた大きな角。
 そして、おしりに生えた黒々とした長いしっぽ。
 あまりにも人間離れしたそれらが、小さかった俺に大きな衝撃を与えるのはたやすかった。

 まだどこかでは、きっとここから出られるだろうと思っていたのかもしれない。

 そんな儚い希望が、ぶっつりと途絶えた音がした。
 だって、鏡にうつった俺はもうどう見たって、人間じゃなくなっていたんだから。

 
 でもまぁ、そんなのもう及川さんはとっくの昔にのりこえちゃっているけどね?

 今ではねぇ、コレが及川さんのチャームポイント!って、豪語出来るようになっちゃった。


 これもきっと、夢の中によく出てくる男の子
のおかげかな。

 ツリ目でつんつん頭の、正義感の強そうな男の子。

 失礼なことに、俺のことを「クソ川」とか「ボゲ川」とか呼ぶんだけど、なんでかちっともそれが嫌じゃない。

 それどころか懐かしさすら覚えるんだ。  
 嫌なことがあった日は、彼が夢によく出てくる。
 そうして、憎まれ口を叩きながらも俺を励ましてくれるんだ。
 
 でも、この間見た夢の中で「やっぱり覚えてねぇのか」とかなんとか言っていた、あれは何だったのだろう。

 懐かしさを覚えているあたり、俺は彼に会ったことがあるのかもしれない。





続く

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