Hero of the End〜Legend of Zelda〜

□第一話
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朝焼け。登ってきた太陽の光により、朝露がバラの園をキラキラと輝かせる。
その上を一匹の鷹が飛んでいく。
どこまで飛んでいくのだろうか。
太陽の光も入らぬ暗き森か。それとも灼熱の砂漠か。
静かなる湖の奥底か。太陽の光を閉ざす雲に守られた火山か。
目を閉じ、その景色を思い浮かべる。
もしも自分に翼があるのなら。どこまでも遠くを飛んでいきたい。
この大きな壁を超えて、ずっとずっと、遠くへ。
彼は目の前にある城壁を見上げ、ため息をつくと、うんと背伸びをし
近くにある木刀を持つと、素振りを始めた。
教会の鐘が遠くまで鳴り響く。
「おはよう。レアン」
「あぁ、おはよう。ローリス」
彼に声をかけた緑の髪の少女ローリスは、起きたばかりなのか
いつもは結い上げている髪を下したままだ。
その長い髪は腰まで届いている。
「ローリス。寝間着で出てくるな」
「何よ。レアンの様子を見に来ただけじゃない」
「…ったく…何が楽しいんだか」
「楽しいわ。レアンと一緒だもの」
「…そっか」
レアンドロスはもう一度素振りを始めると
ローリスはそれを楽しげ見つめながら髪を結い上げ始めた。
彼の木刀が風を斬る音と、彼女の優しい歌声しか聞こえない、午前五時。
そろそろ皆が慌ただしく起きるころだろう。

二人は幼馴染である。
小さい頃、教会に捨てられた子供で、兄妹のように育ってきた。
責任感が強く、いつも真面目なレアンドロスと呑気で優しいローリス。
そんな彼らが捨てられたのには理由がある。
二人の容姿は、この城下町の者ではないからだ。
この城下町、ラトアーヌに住む者達のほとんどが
丸い耳、白き肌、金や茶髪の髪、髪の色とよく似た色の瞳である。
ローリスの髪は緑で、耳は尖っており
レアンドロスの髪は赤で、肌は黒く、耳も尖っていて、目は金色である。
そんな二人を気味悪がって近寄らない者が多数であった。
…もちろん、二人を可愛がる者もちゃんといた。
拾ってくれた教会のシスター達に、近所のパン屋のおばさん。
そして、そんな容姿が少し変わっている者達が集まる騎士団の者達。
普通の生活をしているわけではないが、特別に変わった生活をしているわけじゃない。
それに、自分には気持ちを理解してくれる者がいる。
と、二人は常に思って生きてきた。
そんな彼らももうすぐ18歳になる。
…教会を出て、独り立ちしていかなければならない時期が近づいてきた。
本来、年頃の男女が仲良く喋っていることなど、あまりないのだが
二人はとても仲が良く、いつも傍にいた。
それも、全て容姿が変わっているからこそ、未来が決められたから…。
ローリスは一輪の薔薇のように美しい。
それを聞いた貴族の次男坊が、求婚を申し込んで来た。
レアンドロスは、その力を認められ、騎士団に入ることを決めた。
…それを断って生きていけるほど、彼らに力はない。
「ローリス。もうすぐでここを出ていくんだろう?」
「えぇ、18の夜を迎えた三日後に、お迎えに来るんですって」
「用意はちゃんとしているのか?」
「あら、酷いわレアン。貴方ほど散らかしてないもの」
「俺の部屋は散らかっているんじゃない」
「あら、どうかしら?」
ローリスがここを出て行けば、寂しくなるだろう。
いつも二人で過ごしてきた。寒い夜も、熱い昼も、寂しい朝も。
貴族の家に嫁ぐ。つまりはもう会えなくなる確率が高い。
…この一瞬一瞬が、最後の時なのかもしれない。
「なぁ…ローリス…」
「なぁに?」
彼女の声にハッとする。思わず声に出してしまいそうになった。
言ってはいけない言葉を…。
「…いいところだと、いいな」
レアンドロスの作り笑いにローリスは笑う。
「えぇ、そうね」
彼女の幸せを奪うのはいけないことだと、木刀を握りしめ、精一杯笑って見せた。
そんな彼らの運命を変える者が現れる。

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