Hero of the End〜Legend of Zelda〜

□第二話
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昼時、レアンドロスが薔薇園の手入れをしていたときだ。
いつも聞きなれない音が近づいてくるのに気付く。
…馬?誰が一体何の用で?
冷静さを取り戻しながら木刀を握り、来るだろう相手を待ち構える。
今までも何度か自分達を誘拐しようと目論む者がいた。
大抵が馬車だったが、今回は馬だけらしい。
たまに遠路はるばる遠くからやってくる客人もいる。
ただの客人であればいいのだが…。
ついに、その馬は教会へと到着し、目の前で鳴いた。
白い馬。その上に乗っているのは甲冑を身に纏った赤き髪の戦士。
レアンドロスは木刀を握りしめる手を緩めそうになる。
どうして、何故、この人がここに。
「紅の騎士団長…アウロラ…」
「…私の名を知っているのか」
白い馬は王家に認められた証。その赤い髪を出す人など、他にはいないだろう。
この国の中心にそびえ立つ白き宮殿セティパレス。
そしてそのセティパレスを中心とした城下町を守る王家直属の騎士団。
その中で最も強いと言われる騎士団長アウロラ。
彼は何故、ここに来たのだろうか。
サッと馬から飛び降りると、レアンドロスの前に立つアウロラ。
レアンドロスはボーっとしていることに気づく。
「す、すいませんっ」
慌てて頭を下げる。相手は騎士団長。偉い相手なのだ。
この城下町を守る生ける伝説。
「いい。頭を下げられるのは嫌いだ」
そう言われても、などと呟きながら恐る恐る相手の顔を見る。
彼の顔には仮面が付いてある。
仮面と言われても顔全体を隠す方ではない。顔の上半分のみだ。
よって、彼の口元が弧を描いているのが確認できるので、笑っているのだろう。
だが、その視線は?仮面から覗くその視線は?
そうしてレアンドロスが相手を観察しようとした時
教会の神父の声が聞こえる。
「あ、アウロラ団長様!何故このようなところに!」
「あぁ、連絡もなしに来てしまってすまないな」
「馬の蹄の音が聞こえたため、慌てて駆けよったところでございます」
「連絡もなしに悪いが、私は暇じゃない。用件を話させてもらおう」
「えぇえぇもちろん」
…もしかしたら、レアンドロスが騎士団に入りたいのを知っているのだろうか。
レアンドロスを迎えに来たのか?
しかし、騎士団長自ら来るものなのか?
ニコニコと笑みを浮かべる神父を茫然とレアンドロスは見ていた。
彼は媚を売っている。
相手は騎士団長だ。当たり前だろう。
神父は自分達を育ててくれた大事な義父である。
だが、彼の目にはしっかりと見えた。
この邪魔者を…
レアンドロスの耳には時折、相手の心の声が聞こえる。
彼の耳は真実を聞くことができる耳。
「さぁ、レアンドロス。お前も来なさい」
「…はい」
いつもなら即答できる返事が濁ってしまった。
それだけでもレアンドロスの気持ちを落としていくには十分だった。
「用があるのは君だけじゃない。レアンドロス」
アウロラがレアンドロスに指をさす。
先ほど神父が自分の名前を言ったから覚えたのだろうか。
名指しで呼ばれ、慌てて体を強張らせる。
そして、次の瞬間目を見開く。
「ローリス…彼女にも用がある」
何故ローリスが?騎士団長様は何を望んでいる?
レアンドロスは相手の考えを読み取ろうとする。
だが、騎士団長だからだろうか。どうしても読み取ることができない。
(何か…黄金の霧が…)
相手の心を読み取ろうとすればするほど、目の前が眩いほど光る。
「何故…ローリスに用事が…?」
神父が明らかに困っている。そりゃそうだ。
彼女は教会の資金源となる貴族の家に嫁ぐのだから。
神父にとって厄介者だった彼女は貴族の家に嫁ぐ。
もちろん、その見返りとしてたっぷりと報酬を貰うのだろう。
(ダメだ。違うことを、違うことを考えるんだ)
気づかないように目をそらしていたことが突然、憎悪として蘇ってくる。
神父には育ててもらった。愛してもらった気もする。
そうだ。彼にはたくさんの恩がある。その恩を仇で返してはならない。
それよりもどうして騎士団長が彼女に用事を?
思考を逸らせ。考えるな。考えろ。
「レアンドロス。ローリス。二人が揃ってから私が伝えよう」
彼は神父に案内されるがまま、客間へと足を運んだ。

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