Hero of the End〜Legend of Zelda〜

□第七話
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「アウロラ…気を付けてと、二人に」
「もちろんさ。伝えておく」
「…何もなければ、いいのだけど…」
「君の神託は間違ったことがないだろう?」
「しかし…」
「それに、もう道は踏み外せない。
だったら突き進むしかない」
ネールが手を握りしめる。その手を優しくアウロラが包み込む。
「私のプリンセス。安心して待っていてくれ。
必ず二人とも無事に連れ戻すさ」
アウロラが微笑むとネールも微笑み、息を吐いた。
「貴方に女神ハイリアの加護があらんことを」
「君にも、ね」
最後の別れをする。今生の別れではない。
ただ、数か月は会うことができないだろう。
どうか少しの別れの間に誰かが不幸にならないことを。
…ただただ、祈らせてほしい。

ローリスとレアンドロスは馬車に乗っていた。
再び場所はラトアーヌのド田舎のほうへと向かう。
しかし、自分たちの暮らしていた南側ではなく、東側。
どういうことかと、アウロラから事前に話を聞いていた。
「ラトアーヌが異端の人間を受け付けないように
他の部族たちも受け付けない。
だからこそ、まずはまだ穏便である風鷹族に会いに行こうと思う」
風鷹族はこのラトアーヌから東側。
丁度今から向かう場所に行けば、真っ直ぐに行けるということだ。
「ねぇ、風鷹族ってどんな人たちなのかしら」
「…本では…風のように舞い、鷹のように飛ぶって聞いたな」
「やっぱり私達と違うのかしら」
「さぁ…会ってみないと何とも言えないな…」
ラトアーヌを中心とするクリスタリアの東西南北それぞれに
四つの部族たちが暮らしている。
そして、その間には平原。それから幻の迷いの森がある。
…何を幻かと言うと、その迷いの森を見たことがある人間は
ほとんどいないからである。
そこには見目麗しい妖精達が住んでいるといううわさがある。
妖精達の加護厚き迷いの森の中では魔物が住むことはできず
大地の楽園とまで言う者がいるくらいなのだから
それは滅多にお目にかかることができない。
つまり幻であり伝説の場所ともいえるだろう。
「…ラトアーヌから出たら歩きだってさ」
「魔物がうようよいて馬じゃ危ないって聞いたわ」
「そりゃ、魔物を蹴散らす馬なんていないからな」
レアンドロスは外を見る。王国の紋章掲げた馬車が走っているのだ。
周りの人は好奇心から馬車を見る。
あまり顔を出さないようにする者の、時折目が合う者もいる。
何と思われているのだろうか。
「…なぁ、ローリス」
「どうしたの?」
「…世界は広いんだろ?」
「えぇ」
「…きっと、どこかに俺達と似た状況の人がいて
そんな人が仲間になったらいいなって思うんだ」
クシャリと笑うレアンドロスに微笑むローリス。
「私もよ。レアン」
ラトアーヌ東城壁が窓から見えるようになると
活気で満ち溢れた人の波は消え、彼らの冒険の幕開けの合図を
今か今かと待ち遠しく待っている声が聞こえる。
「さぁ、ここからは歩きだ。いいな?」
「「はい」」
アウロラを先頭に東門を出て、外の世界を初めて見る。
果てしなく広がる平原。美しく地平線の向こうまで青い空。
安らぐように流れる雲。小鳥たちの美しい鳴き声。
レアンドロスは深く息を吸って、深く息を吐く。
「冒険の始まりだ」
後に【勇者】と呼ばれるレアンドロスの今、幕を開けた。
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