Hero of the End〜Legend of Zelda〜

□第八話
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魔物がたくさん出るのかと思えば、そういうわけでもなかった。
ごく普通の平原の真ん中をただただ歩いている気持ちだ。
「ここから二日歩いたところに風鷹族の集落がある。
休憩を取りながら行くから安心しろ」
…アウロラの発するオーラ。
殺気などではないが先ほどから赤く、強いオーラを感じる。
(赤い、オーラ?)
レアンドロスだけ、たまに見ることがあった人のオーラ。
ただそれは人の強い感情が見えたりするだけであり
赤いオーラは数多く見えたことがあれど
こんなにもまばゆく輝く赤いオーラを彼は知らない。
(…たまに見せるローリスのオーラと似てる…)
ローリスもまた、緑のオーラを見せる時がある。
どんな時かは今となっては覚えていないが
あまりにも綺麗で口を開けてみていたのを覚えている。
とにもかくにも、その美しく赤いオーラがただの魔物達を
引きつけていないようにも見える。
…いや、惹きつけているからこそ、攻撃できないのかもしれない。
(魔物にも見えるのだろうか…この、赤いオーラ)
もしかしたら自分は魔物と同じ目を持つのではないか
…いや、違うかもしれない。だが、確率は五分五分である。
「あの、アウロラ団長」
「どうしたんだい?ローリス」
「ここから先、ずっと平原が続くんですか?」
「いや、向こうに少しだけ森の入口が見えるだろう?
あの森の奥のほうに風鷹族の集落がある」
「じゃあ、まず今日はあの森につくのが目的だと思っても?」
「そうだ。とにかくあの森を一心に目指す」
遠くに見える深緑の森。いったいどんな者達が住んでいるのか。
果てしなく広がる草原を見つめ、思いを巡らせていた。
そんな時だ。

ドスッ

背中に響く鈍い音。音の割にはいたくないものの、背中のほうを見る。
「待ちたまえ!そこの赤い髪の男!!!」
何故か異常に耳に残るこの声。厭らしいっちゃ厭らしい。
「ギラヒム。赤い髪の男は二人います」
次いで少女の声。どこか透き通っているその声は優しい。
「じゃあ…黒い肌の男!」
「俺?」
レアンドロスは首を傾げる。
って言うか、後ろに誰もいないのだが。
「君に一目ぼれした…さぁ!この究極のダンスを見たまえ!」
「あの、どこにいるか、わからないです」
「………下を見たまえ、下を」
レアンドロスは視線を下げる。そこには手のひらサイズの小さな…
「全身白タイツに赤いマント…」
「灰色の肌に赤の羽…」
「妖精族か?珍しいな」
「「これが妖精族!?」」
アウロラの言葉に目を見開く二人。それを聞いて自慢げに笑う白タイツの男。
「はっはっはっ。驚くな諸君。
君達にとっては珍しく素晴らしい妖精族のギラヒム様の登場だ!」
「…うわぁ、なんだか夢潰れちゃった」
「なんか、妖精って感じしないよな」
「ほら、妖精って可愛くて、優しくて。この子みたいな」
「そうそう。妖精って言えばやっぱり青とか黄色とかイメージしやすいよな」
「ファ、ファイのことですか」
「「そうそう」」
「おぉい!!このギラヒム様を置いてなんてことを言うんだ!!
失礼な奴らだな!くらえ!求愛ダンス!!
ふふふんふふーんふーん、ふふふふーんふふーんふーん」
「いや、求愛ダンスってくらうものだっけ」
「なんか、小さいのに威圧感があるね」
「威圧感って言うか…なんていうか」
「求愛ダンスをする妖精は初めて見たな」
「いや、アウロラ団長。そこ真面目に考えなくて大丈夫だと思います」
「ほう!君があのアウロラか!やぁやぁギラヒム様だ!」
「「うわぁーなんか傲慢」」
「ギラヒム。求愛するはずの相手に引かれています」
「なんだって!?」
ローリスがクスリと笑う。
確かにイメージの妖精とは90度違ったが180度ではない。
隣にいるファイと言う名の妖精は
青い髪に青いワンピースを着て妖精みたいだし
二人とも妖精族の特徴とする宝石を見につけている。
…運がいいのか悪いのか。しかし、敵意が内容であるため、運が良かったのかもしれない。
「私達は風鷹族のいるフィローネの森へ行かなければならない。
邪魔しないでもらえるかな。妖精族のお二人」
アウロラが真顔で答えるとムッとした様子でギラヒムは睨みつける。
それを抑えるようにファイは彼の手を掴んでいる。
「ねぇ、求愛ダンスって…レアンに対して?」
ローリスが空気を変えようと首を傾げて問いかける。
それを待ってましたというように嬉しそうに胸を張り答えるギラヒム。
「我が妖精族ではね、親愛なるマスターと呼びたい者には
求愛のダンスを送れと言われているんだよ」
「そんなルール、妖精族にはありませんよ。ギラヒム」
「いいんだよ!私が今決めたから!」
「え、それでいいの」
「とにかく!私は君の容姿に惹かれた!我がマスターとなってくれ!
さあ!求愛のダンスを!!」
そう言って再びダンスを押し付けようとするギラヒムを
慌てた様子でレアンドロスは片手で掴むと多少ギラヒムは照れた様子だが
動じずにむしろ嬉しそうに笑った。
「私のマスターになる気になったんだな!?」
「ちょっと待った!その前に、俺の容姿?どうして?」
その言葉にギラヒムは先ほどの自慢げな笑みも消え、口を開いた。
ファイさえも制止の言葉もかけず目を見開いている。
「…何を言ってるんだい。君の容姿に惹かれるのがおかしいのかい?」
「そ、そりゃそうだろ。俺の容姿は…」
「君の容姿は酷く素晴らしい。その見たことなアンバランスさがまさにバランス。
芸術だ!風鷹族のような金色の瞳!水妖族のような尖った耳!
岩土族のような黒い肌!竜火族のように赤い髪!まさに!生ける芸術!」
「違う!そうじゃなくて…」
ギラヒムは不機嫌そうな目で彼を見つめる。
彼は切なそうな顔をした後、不安な顔で問いかけた。
「…変だとは、思わないのか?」
愚問だったのか。ギラヒムは鼻で笑った。
「何をおかしなことを…お菓子のように甘ったれたことを聞かないでくれ。
君の容姿が変?ならば私の容姿も変に決まっている」
「え」
「いいかい?この世界に正しい容姿なんてものはないんだよ。
私のこの肌色の肌もまた奇妙。ラトアーヌ人の茶髪も奇妙。
君の容姿も面白い。世の中は全て違う物でできてるんだよ」
「ファイも、そう思います。
貴方の容姿は決して変ではありません。
現に、妖精族にとってラトアーヌ人こそ変です」
「たし、かに」
「だけどね、その種族の壁を超えて、私は君に惚れたんだよ!
まさに!私のマスターになるにふさわしいとね!」
ギラヒムの自信ありげな言葉とファイの優しい言葉にレアンドロスは微笑む。
「…あり、がとう」
なんて優しい妖精なのだろうか。
「さあ!マスターになる証に誓いのキスを!」
前言撤回。変態な妖精だ。
「しません。名前とギラヒムの名を名乗り、誓ってくださればそれでよろしいです」
「ファイ!全く君は!」
「じゃあ、俺の旅についてきてくれるかい?ギラヒム」
「え、い、いいのかい?」
「そりゃ、容姿、褒めてもらったの嬉しかったし。
仲間は多いほうがいいだろう?…どう、思う?」
彼は二人に目をやると二人とも微笑んだ。
「…レアンの好きにしていいと思う」
「私はそいつが苦手だが、君が望むのならいいさ」
「じゃあ…ギラヒム。俺は…レアンドロスは君のマスターになることを誓うよ」
その刹那、ギラヒムの宝石がキラリと光り、その羽根は美しく輝く。
「力がみなぎってくるのがわかる…マスターの祈りの力!」
ギラヒムはわなわなと震えだすと…踊り始めた。
「マスターレアンドロス。私のマスター。
我が主。貴方の生涯を共にすることをここに誓いますマスター!」
キラキラと目を輝かせたギラヒムは羽根を振るわせた。
次第に羽根の光は薄れて行き、元の姿へと戻って行くが
彼の自信に満ちが顔はさらに自信に満ち溢れている。
「よろしく、ギラヒム」
こうして、新しい仲間と言う名の変態が加わった。
彼の見つめる先のレアンドロスは、いつにもまして優しげな表情をしていた。

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