Hero of the End〜Legend of Zelda〜

□第九話
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「マスター、マスター」
「…あのさ、黙るって…知ってる?」
「マスター!この先の危険は私がお守りしますマスター!」
「うん、あの、それ聞いたかな」
「マスター!森の入口に入っても危険がつきものですからお守りしまっ」
「ちょっと黙れ、妖精」
いい加減黙らないギラヒムをアウロラは彼を掴み握る。
「離せ!アウロラ!マスターとお話させろ!!」
「いいか?お前のお喋りを聞いて魔物達がこちらに注目してるんだ。
お前のせいでお前のマスターが傷ついてもいいのか?」
「うぐぅ」
「ファイもアウロラ様に賛成です」
「ファ、ファイ」
「ファイは元より、こんな平原でおしゃべりしているギラヒムを
尊敬の意を超えてレッドキャップのようです」
「レッドキャップはただの伝承の中の妖精だろ!あんな妖精人殺しじゃないか」
「だから尊敬の意を超えてギラヒムは伝承の中の妖精なのです」
「…も、もういいさ!黙るさ黙る!黙ればいいんだろう?」
アウロラの手から逃げるように飛ぶとレアンドロスの方に乗り
ムスッとしながらも黙るようになる。
少しクスッとローリスが笑うとファイはハッとして隠れるようにギラヒムの影にいる。
「ねぇ、二人の名前はギラヒムとファイ、なのよね」
「そうです」
「妖精の名前はどうやって決めるの?」
「…妖精の、長が生まれた時に決めます」
「妖精が生まれるって、具体的にどんな?」
「花が咲くのです。白い薔薇の花なのですが、特別なバラで
そのバラが咲くと妖精が生まれ、長のもとへ飛び立ちます」
「へぇ…そうなんだ」
彼女は嬉しそうに笑うとレアンドロスも嬉しそうに笑う。
アウロラはお喋りが続くことに少し不満があるようだが
二人が楽しそうにしていることが嬉しいようで黙っている。
「俺達の教会の周りにも白い薔薇があったよな」
「知ってます。私はマスターの教会の薔薇で生まれましたから!」
「え」
「ずっと、ずっと、ずっと…」
ギラヒムは何かを言いたげにレアンドロスの前に飛び立ち、彼の目を見つめるが
すぐに視線を逸らしてまた肩の上へと乗り、項垂れた。
「ファイとギラヒムはラトアーヌの小さな教会の白い薔薇から生まれました。
私達はお二人のことを、よく知っているのです」
ファイが恥ずかし気に、だけどもハッキリ言うと、ギラヒムはボソリと呟く。
「だけど、すぐに妖精の王のもとへ行かなきゃいけないから…」
「俺達の容姿しか覚えてなかった…ってこと、かな」
「すごく、綺麗に見えたんだ。あの光輝く太陽の下で
キラキラと輝く黄金の瞳と燃えるような赤い髪を揺らして
灼熱の太陽にも負けないような美しい肌を俺達に差し伸べて
いつも私達の声をその尖った耳で聞いてくれてた、から…」
ギラヒムは恥ずかしそうに告げると、レアンドロスは微笑む。
「そっか。すごく嬉しいよ。ギラヒム」
ギラヒムの頭を撫でるよう人差し指でそっと撫でると
気が付けばラトアーヌの城壁はかなり小さくなっていた。
アレだけ大きく感じていた城壁も、こうなれば小さなものだ。
ギラヒムの言葉で知っただけでなく、実際に見て自分の住んでいた場所もまた小さいことを知る。
「ギラヒム達の住んでいる妖精の森は何処に?」
レアンドロスはふと、疑問に思ったことを呟くが、ギラヒムは眉間に皺を寄せる。
「マスター。私達は何処にでもいるようでいないのです」
「…どういうこと?」
「妖精は異次元にいますから。
本来は夜中にこっそりと現れ、人間たちの手伝いをしたり、悪さをする者に
悪戯をするのが妖精の役割ですから」
「なるほど…」
よく小さい頃から耳にする「妖精の悪戯」とは
まさに妖精たちがしていたことなのだということがわかる。
お礼にコップ一杯のミルクを上げればいいのだと言われ、よく寝る前にミルクを置いたことがあった。
「ファイ達は異次元に繋がる泉…大妖精の泉からワープしてきたのです」
「ワープ…」
「妖精の中でも、最も大妖精に近づけるものは人間界に留学をしに行きます」
「「「留学?」」」
レアンドロス、ローリス、アウロラでさえも聞きなれない留学と言う言葉に首を傾げる。
「まさしく、私のきらびやかな人生を歩むにふさわしいのさ」
「ファイ達は大妖精になるために、人間のことを詳しく知る必要があります。
そのため、人間界に頼りなく歩き回り、主を求め、主と共に生き
人間のことを知って、人間から宿る愛の力を蓄え、妖精界に戻り、大妖精になる試練を受けます」
二人はあまりにもよくわからない言葉が並び混乱した。
ギラヒムとファイは楽しげに話しているが、正直、人間の常識にはない言葉が多い。
「…小さい頃、ネールから聞いたことがあるよ。
大妖精になる素質のあるものが人間界に来るけれど、数万に一人
大妖精になればいい方だと」
その言葉にファイが頷く。
「そうです。愛がある者を主にした者は早く愛の力を蓄えます。
悪意のある者を何度も主にした者は妖精ではなくなります」
「妖精ではなくなる?」
「はい。愛ではなく闇が心を支配するのですから
それを私達も人もは妖精と呼びません。
それらの馴れの果てを私達は人間たちの言う「人殺しの妖精レッドキャップ」と呼びます」
「レッドキャップ…確か、赤い帽子をかぶった妖精だよね」
「はい。実際にはいませんが、人殺しをした証拠である血に染まった赤い帽子。
それと同じく、闇に染まった妖精。
妖精界ではまた別の名で呼ばれますが…人間界の伝承にあるレッドキャップに近いと、言われています」
レッドキャップは子供達を戒めのような伝承ではあったが
それと同じようなものがいるのかと思い、レアンドロスはゾッとする。
しかし、彼らがそうでないというのがわかっている以上、今、脅えるものではないとも判断する。
「ま、そんな奴らが来たら私が一網打尽にしてあげるさ…マスターの力で!」
「そこはレアン頼りか」
「仕方ないじゃないか。愛の力がないとどうしようもないんだから」
「あの、さ。愛って具体的に?」
「もうっ!マスターそんなことを私に聞くなんて野暮ですよ!」
「いや、あの、そういうのだったら契約解除したいです」
「いやいやいやいや!マスター!!愛の力とはすなわち、主の人を思いやる気持ちが大事なのです!
だから!私をこのまま僕に!!」
レアンドロスが人差し指で軽くギラヒムの頭をつつく。
「僕、じゃなくて仲間、な」
その言葉に涙を流すギラヒム。
「マ、マスター!!貴方はなんて優しい人なんだ!!」
その時、ギラヒムの腰にある宝石が光ったのだが、それは今度説明しよう。
ギラヒムは嬉しそうに笑うとくるくると回り始め、ダンスをし、踊り始めた。
そんな風に歩き、喋り、日が暮れ始めると、森は段々と近づいてきた。
だが、ローリスの歩きは少し遅く、到着するのに時間がかかった。
「今日はここで野宿しよう。明日には森の入口につくさ」
アウロラの言葉で野宿をすることになったが、まだまだ今日は続くのである。
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