闇を愛した魔女

□第一話
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羅菜…と言います。学生、趣味はバンド、ダンス、舞台鑑賞。
ってぇ!そんな場合じゃないってば!もうっ!
「ここどこぉー!」
怒り狂って周りを見渡す。
覚えているのは「帰りにケーキでも食べていこう」と思ったぐらい。
突然眩暈がして…こんなところに…ど、どこなの、ここ。
「暗いし…森だし…何コレ、ホラー?怪奇現象?ドッキリ?」
ガクガクブルブル…すなわちガクブルと震えながら周りを見渡す。
え、今夏だよね。すごく寒いんだけど。マイナスイオン?
森の効果ですぎでしょ!…ってツッコんでる場合じゃなぁーい!
「スマホ、スマホ」
辺りを見渡す。学校の帰りに持っていたリュックが落ちているのを見つける。
「よかったぁ。スマホなかったら死ぬとこだったよ。
とにかく友達に電話した後、バイト先に電話でしょ?
あ、その前に警察に電話しなきゃ。助けてもらわないと」
スマホのロック画面を立ち上げ、ロックを解除する。
慣れた手先で友人の番号をタッチすると、耳元にスマホを持ってきて相手の返事を待つ。
…お風呂に出も入っているのだろうか。
いつもならすぐにでる友人への着信音が森に響き渡り、奇妙さが倍増する。
「いやいやいやいや、やめてよ。ねぇ、出てよ」
『おかけになった電話番号は…』
「いやいやいやいやいやいやいやいや、使われてないとかマジないから!」
『現在使われておりません』
「いや!昨日まで…いや、さっきまで使えてたってば!」
『プツッ』
「いやあああああああ!ウソって言ってぇ!!!」
…思わず突っ立ってしまう。どうしよう。
「警察!何かイタズラされてるのかも!110番だよね」
『現在使われておりません』
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
『プツッ』
「いやいやいやいやいやいや!こんなところで死にたくない!」


ガサガサっ


「ひぃっ!何、何!?なんなの!?」


ガサガサガサッ


「熊?狼?犬?野良犬?どっちにしろ危ないんですけど!
ねぇ、誰か出てよ。ねぇ、ねぇってば!」
ひたすら知っている友人の電話番号を押す。
しかしどれもこれも答えはこうだ。『現在使われておりません』
警察までイタズラするとは思えない。ならば、こんな森に何故囚われてしまったのか。
段々と近づいてくる物音に身構える。


ガサガサガサガサッ!


「…お、女の子?」
「イ、イケメン?」
少女と青年は暫く放心すると
「きゃあああああああああああああああああああああ!!!」
「うわあああああああああああああああああああああ!!!って、声でビックリしちゃったよ」
「ゆ、ゆ、誘拐犯がイケメンだったぁああ!喜んでいいの!?喜ぶべき!?」
「いや、何、誘拐犯って」
「ひぃ、近づかないで。ちょ、ちょっとタンマ落ち着かせて。ひ、ひ、ふぅー。
無理無理無理無理。今から何されるの私。無理だって。マジ無理」
「いや、何もしないけど何してるの、ここで」
「いや、何もかれもこれも貴方がここに連れてきたから…じゃ、なさそう」
「そうだね。連れてきてないね。俺もびっくりしてるからね」
「…た、助けに来てくれたんですか」
「森の動物たちが騒々しいから…見に来たんだけど…」
「…ヒーローではなかった」
「…助けれるなら、助けようか?」
「ヒーローだった!」
私は嬉しさのあまりピョンとその場を軽く飛ぶと
私のトレードマークである笑顔が出てきた。
「私の名前は羅菜って言います。○○大学の学生で、学科は…」
「待って、どこって?○○…ダイガク?ガクセイ?ガッカ?」
「えぇっと…ここは…アフリカかどこかかしら…?」
「…もしかして都会から来たの?」
「そ、そうね。シティ育ちよ。シティっ子だけど…。
大学知らない田舎の人は初めて見たわ…」
「俺はリンク!よろしくな!ラナ!」
「リンク?…外国人?」
「…君こそ外国人っぽいけど…そんな黒い髪初めて見たよ」
「こ、これは日本のトレードマークですけど!?」
「…二ホン?」
「あー…外人さん的にはジャパンかしら?」
「ジャパン?知らないなぁ…」
「えーっと、発音が悪い?Japanだけど」
「…聞いたことないなぁ…どこの村だろう」
「いや、国だけど」
「…国?君は他国から来たの!?」
「…えっと…い、一体ここは…どこ?」
「ここはハイラル。黄金の三大神が舞い降りた神聖なる土地…の端っこの森。
フィローネの森のど真ん中だけど」
「ひぃ。ハイラル…」
私はその場でふらふらと倒れた。
「ラナ!?」
最後にイケメンを見て死ぬのも、悪くはないかも…。
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