One Piece〜short〜

□マルコ 青い鳥
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この地平線を超えたもっと先に、君はいるのだろうか。
どんな顔をしているのだろうか。
新しい奴と仲良く笑って喋っているのだろうか。
それとも君は今でも俺を待ち続けているのだろうか。
置いていったのは俺のくせに、今でも未練がましく君のことを思っている
俺は馬鹿なんだろうか。
そんなことを思いながら空と海の境界線、地平線の彼方を見る。
ここからは島も、船も、何も見えない。
時折鳥が飛んでいくぐらいだ。

「鳥…ねい…」

自分は不死鳥のマルコである。
不死鳥なのだからもちろん鳥になることができる。
ここから翼を広げ飛んでいくことだってできる。
だが、空を飛ぶ鳥にも帰る場所があるように
俺にも帰る場所がある。
海を漂うこの船が、俺の居場所だ。

私、ずっと待ってる。貴方のこと

彼女の笑顔も、声も鮮明に思いだせていたはずなのに
月日が経つにつれ彼女の声も、顔も、何もかもがぼやけて行く。
あれは夢だったんじゃないかって呟く自分もいる。
夢じゃないって否定したくて彼女に会いに行きたい自分がいる。
だけど、彼女に会いに行くことはできない。
行ってしまえば、決意が揺らいでしまう。
親父を海賊王にするまでは、この船に乗り続ける。
親父が俺を息子と呼び続ける限り、俺はここにいる。
その決意が、彼女の顔を思い出すたびに揺らぐ。
彼女を迎えに行きたい。彼女の傍にいたい。彼女を守りたい。

「何が、幸せを運ぶんだよい」

俺は苦笑をする。彼女は昔、俺が鳥になった姿を見たことがある。
人から見れば、俺が鳥になった姿は化け物だという。
人とは違う能力。気味が悪い。
そう呟く者もいれば不死身なのだから致命傷を与えても平気だと
笑って殴ったり蹴ったりしてくる奴もいた。
家族たちだけが、俺の鳥の姿を認めてくれた。
…だから、家族以外で初めてだったんだよい。

青い鳥なのね。きっとマルコは幸せを運んでくるんだわ

彼女は笑う。嬉しそうに、幸せを運んでくるのだと。

でも、鳥籠の中に閉じ込めてはダメなのよ。
幸せを独り占めしてはダメなんだわ

彼女は俺が出航する前にそう言った。
彼女の言葉一つ一つが忘れられない。

ねぇ、マルコ。私貴方と会えて幸せをたくさんもらったわ

嬉しそうに笑う彼女を見て、俺も笑う。

「俺は、お前を幸せにできたかねい?」

必ず迎えに来ると呟き、彼女を独りにさせてしまった。
彼女は今でも一人で待っているだろう。
もしかしたら、他にいい男ができたかもしれない。
それでもいい。君が幸せなのなら、それだけで…。

「女の嫉妬は醜いとは言うが…男の嫉妬も気味が悪いよい」

ケラケラと笑う俺を船員達が怪しげに見る。

青い鳥

(君に幸せを運ぶことは)
(できていたのだろうか)

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