White Beard Family

□White Beard Family2
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「ほぉら!サッチ特製ホットケーキ!
生クリームたっぷりに果物たぁっぷり!」
「サッチ!俺には!」
「ない!」
「ひでぇ!」
おチビさんの目の前に置かれた大きな大きなホットケーキ。
一人じゃ食べられないんじゃないだろうか。
きっと残したのは勿体ないからエースが残飯処理してくれるだろう。
なんて考えながらサッチが作った美味しい美味しいホットケーキ。
果物もたっぷり乗っていて生クリームもついてる。
なんて豪華なホットケーキだ。
…だが、彼女は不満げに唇を尖らせる。
「ちあう」
「「「え?」」」
「これ、ケーキじゃない」
「いやいや、ホットケーキよ?」
「んー、ちあう」
眉間に皺を寄せて下唇を噛んで、不満を述べるおチビさん。
「じゃあ俺が食う」なんて言うエースを無視してマルコとサッチは顔を見合わせる。
白ひげの船、モビー・ディック号は大きく広い船だが
もちろん食料を無限に置いておける場所などない。
親父の誕生日に大きなバースデーケーキを焼くことはあれど
兄弟たちの誕生日を毎回祝えば365日あっても足りないほど。
だからケーキとかじゃなくて親しいものがプレゼントしたり、祝いの言葉を投げかけたり。
だからこそ、彼女のためにケーキを焼くための材料がないのだ。
もちろん、焼けないわけじゃないがサッチも早く作ったほうがいいと
彼女に気をきかせてすぐにできるホットケーキを作った。
「…ケーキ…」
完全に項垂れるおチビさん。あぁ、どうしようか。
「なぁなぁ、一口食べてみろよ」
エースが少女の頬をつつく。
「サッチのホットケーキは頬っぺたが落ちるほど美味しいんだぞ」
「ほっぺたおちちゃうの?それはやだ」
「いや、なんていうか…頬っぺた落ちそうなぐらい美味いってことだ」
おじさん二人はエースとおチビさんのやり取りを唖然と見ている。
彼女はフォークを手に取ると大きな口でそれにかぶりついた。
「んむっ…んまっ!」
噛んでるのかわからないけれど、すごい速さで飲み込むと彼女は嬉しそうに笑った。
「あのね、あのね、これおいちいよ」
おチビさんはホットケーキを指差して嬉しそうに笑う。
「そりゃよかった」
おチビさんが嬉しそうに食べ始めると
周りのギャラリーたち含むオッサンたちの安堵のため息。
泣くんじゃないかと気を張っていたが、流石末っ子エース。
ガキの気持ちがよくわかるらしい。
「エース、さっきの怒りはチャラにしてやるよい」
「ん?さっき?」
「エース、今日は肉大量にしてやるよ」
「お!マジか!ってか俺にもこれ作ってくれよ!」
「おチビさんのたべる?」
「おぉ!俺も食う!」
「お前が食べたらコイツの分がなくなるよい」
その後、彼女は半分も食べないうちにお腹いっぱいになり
けふっと息を吐くとマルコの腕の中で眠りについた。
もちろんその後のホットケーキの処理はエースにすべて任せ
マルコはとりあえず寝かせるために自室へと向かう。
気にかけたサッチも後を追ってくる。
「なぁ、マルコ」
「なんだよい」
「この子もグランドラインの怪奇現象ってやつか?」
「…さぁねぃ」
すぴすぴと眠る少女を見てマルコもサッチも優しげに笑う。
心底幸せそうだ。
「空き部屋がなかったかねい」
「空き部屋ぁ?あー…確かこの前女房できて船下りたやつの部屋が空いてる」
「そこ、使えそうかい?」
「まぁ、使えるっちゃ使えるが…どうする気だ?」
「いつまでも俺の部屋に置いといちゃいけねえだろい」
「…まぁ、そりゃそうだな」
隊員たちに声をかけ、空き部屋を徹底的に掃除させ
掃除が終わった後もすやすやと眠る彼女を部屋のベッドに寝かせて
マルコもサッチも自分たちの仕事へと戻る。

…夜中、悲劇は起きる。
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