White Beard Family

□White Beard Family9
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「シャッチ、シャッチ」
「ん?どうした?」
「あれ、しってるよ」
「…桜を知ってるのか?」
「うん。みたのよ」
数十分前、マルコも一緒に降りるのだと言ってきかなかったおチビさんだが
島に無理やり降ろしてつれてくれば楽しそうにキョロキョロと辺りを見回す。
小さな手をつないでサッチとおチビさん春島散策。
食料の買いだしは四番隊の人達が行っているため、今日は楽でいい。
「やっぱ春島の気温はあったかいな」
「ぽかぽかだねー」
「ふぁ…眠くなってきやがった」
普段足の速いサッチは、小さなおチビさんに合わせているため
かなりスローペースになっている。
だが、彼女は小走りなのだからこれ以上速くするのもどうなのか。
「お…」
そんな時、サッチの目に映りし魅惑の一品。
「これは…幻と言われた酒。海賊殺しじゃねぇか!!」
「よぉ!あんちゃん!コイツが欲しいのかい?」
「あぁ!これを親父に持って帰れば絶対に喜ぶはずだ!」
「だがな、これを手に入れるためにはこれから行う腕相撲大会に参加しなきゃならねぇ」
「おぉ!んなの出てやるよ!!」
「よしっ!あんちゃんこっちに来な!」
「おぅ!!よし、おチビさんはここで待ってるんだぞ。いいな」
「ふぇ?」
「じゃあ、そこから動くなよー!」
…サッチママ、使い物にならず。
幻の酒を手に入れるため、サッチは遠くの会場へ早足で行ってしまった。
もちろん、ついていこうとしたがついていけるはずもなく
途中の道で迷子になってしまうおチビさん。
「…まいごになっちゃった」
キョロキョロと辺りを見回す。知らない人ばかり。
エースもいない。サッチもいない。マルコもいない。
白ひげ海賊団の人達も見当たらないし、頼れそうな大人がいない。
いいかい?迷子になった時はそこでジッとしとけよい
というマルコの優しい言葉を今となってはわからない。
「シャッチ。シャッチ。ねぇ、シャッチ」
ウロウロウロウロ、あふれ出しそうな涙をこらえて歩き出す。
涙で周りが見えていないが、とりあえず走り出す。
そこで、ドスンッと誰かの足にぶつかる。
「おぉ、大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「…っ…あああああああああああああああああああああああ!!」
「うぉ!泣いた!」
「ああああああああん!!シャッチいぃいいいいいいい!!」
「ほ、ほら!お兄さんがアイス買ってやるから!ちょっと待ってな!」
「…アイシュ…」
「よしよし、いい子だいい子だ」
小走りでアイスを買ってくれたお兄さんと名乗るおじさんに「ありあとー」と言うと
おじさんは手をつないでくれた。
「迷子か?親御さんはどこ行った」
「シャッチね、おチビさんをおいてどっかいっちゃった」
ぐすっ。再び泣きそうになる。
「シャッチ?どこかで聞いたような…ま、いっか。
よしっ!お兄さんとシャッチを探す冒険に出るか!」
「…でもね、マルたんがしらないおいたんにはついていっちゃダメって」
「大丈夫、お兄さん悪い人じゃないから」
「じゃあ、だいじょうぶだねー」
繋いだ手と手。歩き始める二人。
「おいたんはだぁれ?」
「お兄さんか?お兄さんの名前はシャンクスって言うんだ!」
しつこくおじさんを拒否する自称お兄さんシャンクス。
「シャンクシュかー」
「お前さんの名は?」
「おチビさんはね、おチビさんっていうのー」
「おぉ、じゃあおチビさん。シャッチを探す冒険へ!いざ…」
「お頭、探したぞ」
「ベン!!」
そこに現れた新たなるおじさん。
おチビさんはシャンクスの後ろに隠れ、様子をうかがう。
人柄のよさそうなシャンクスと違ってこのおじさんは悪そうだ。
「…なんで逃げる」
「お前の顔が怖いからだろ」
「っていうか、どこのガキだ」
「俺の」
「ふざけるな」
「…拾ったんだよ。足にぶつかってさ。迷子らしい」
「…まったく、厄介なのを拾ってきたな…」
シャンクスは後ろに隠れたおチビさんを抱き上げると
ベンの前に突き出した。
「ほれ、かわいいだろ」
「あぁ、ガキは可愛いな。お頭と違って」
「なんだと!?」
「名は?」
「おいたんだぁれ」
ベンは苦笑いする。
「ベンだ」
「おチビさんはおチビさんっていうのよ」
「そりゃあいい」
おチビさんの頭をくしゃくしゃと撫でると、ベンは困った顔をした。
おチビさんを怖がらせないようにシャンクスにしか聞こえないよう喋る。
「…ガキの親を探すのもいいが…困ったことに
今、白ひげ海賊団もここにいるらしい」
「海軍が集まってくるな…」
「一度この島から出た方がいいと、言おうと思ったんだが…」
二人の視線がおチビさんへと向く。
くるりとまぁるい瞳。二人を見上げる。
「おチビさん。お前俺の船に乗るか」
「おふね?」
「よし、こいつ連れて行こう」
「いや、ダメだろう」
「なぁに、ちょっと旅行して帰ってくるだけだって。な?」
「…お頭…」
「一日!一日だけでいいから!」
「ったく…」
「だって可愛いんだもの!!」
おチビさんはよくわからないといった様子で見る。
船に戻るのだから、じぃじやマルたんのいるところへ帰れるのだろうか。
なんて予想しながら「いくー」なんて言ってしまい
シャンクスは彼女を船へと連れて行く。

…だが、そこは白ひげ海賊団ではない、赤髪海賊団の船だった。
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