White Beard Family

□White Beard Family17
1ページ/2ページ

「ハリュタ」
「ん?どうしたの?」
最近、賞金首になった僕らのおチビさんは今日も元気。
…普段ならマルコの傍にいたり、エースとサッチが世話していたりするけれど
今日はそんな三人の姿が見えない。
って言うことは,三人が仕事に追われて忙しくなったのだろう。
一応あの三人も隊長格だから仕事はあるしね。
「あんねー、おチビさんね、ハリュタのことずっとおうじさまだとおもってたの」
「…王子、様?」
「はくあにのったおうじさまだとおもってたの」
それはきっと僕の格好から見て勝手に判断してたんだろう。
だが、彼女の言葉はおそらく過去形。
僕が王子様じゃないということはもうわかっているのだろう。
「ずっと、おうじさまだとおもっちゃった」
「そっかそっかぁ」
うん、この子連れ攫いたい衝動に駆られる!
なんだこの可愛い生き物は!連れて帰りたい!
…これはマルコやエース、サッチも知らない可愛さだろうな。
「僕がおチビさんの王子様だったらどうする?」
「んー、どうちよう」
「そっかそっかぁ」
ニヤニヤが止まらない。くそっ、可愛い。
うちの末っ子が可愛すぎる!
「でもねぇ、おチビさんはまだおよめしゃんになちゃいけないんだって」
「え?」
「だからおうじさまがきてもいっちゃメッ!なんだって」
「だ、誰から?」
いや、聞かなくてもわかるだろう。
「マルたん!エーシュとシャッチもメッって!」
そりゃそうだろう。あの三人のこの子に対しての過保護っぷりったらありゃしない。
…だけど、いつの日かは彼女にも王子様が現れる。
いや、白馬に乗った王子様が来るかどうかは別として
彼女の本当の、運命の王子様が来る。
…その時にあの三人はちゃんと別れる準備ができるのだろうか。
「なんでダメなんだろうねー」
「そうだね」
いや、それは僕だって同じだ。
こんな可愛いうちの娘を連れて行かれたら白ひげに戦争を仕掛けるみたいなものだ。
僕も正直、彼女がこの船から降りるなんて考えたくない。
「よぉ、おひいさん」
「あ、イジョー」
「それにハルタも」
「僕はついでか」
「どうした?そんな困った顔して」
「あんねー、おチビさんっていつおよめしゃんになれるの?」
「って話をして…たんだ…」
嬉しそうに話す彼女の顔を見た後、パッとイゾウを見ると固まっている。
ハッとして周りを見渡す。ここは甲板だ。
大勢の野郎どもがこちらを見て様子をうかがっている。
「どうしたんだよい」
食堂に来ると、全員が固まっているという異常現象に
マルコが怪訝そうに眉をしかめながらこちらを見た。
「あー、マルたん」
「仕事、終わったよい」
「じゃあ、あそべるねー」
「ずいぶん仕事終わるのが早いこと…」
「で、今まで何してたんだよい」
チラッとイゾウをもう一度見るとまだ固まっている。
まるでそこに立っている石像の如く微動だにしない。
「あんねー、ハリュタがおチビさんのおうじさまかもって」
「ほぉ?」
「ちょ、おチビさん!?」
「でもねー、マルたんおよめしゃんメッっていったでしょ?
だからいつならおよめしゃんなれるかなって」
「なるほど、ねい」
ニコリとマルコがこちらを見る。
「大丈夫だよい。そのうち違う王子様が来るよい」
「そっかー」
マルコの言葉も痛いが、納得したおチビさんの純粋な言葉も痛い。
「おひぃさん。絶対に後十年は男連れてくるなよ」
「じゅーねん?」
「そうだねい。後十五年はダメだよい」
「それからこの船の中の男もダメだからな」
「俺にしとけよい」
「いや、それはダメだろうが。俺にしとけ」
「おチビさんねー、けっこんするならせーじつなひとがいい!」
言い争っていたマルコとイゾウが固まる。
一体何処でそんな言葉を聞いてきたんだ…。
だが、彼女はくふっと嬉しそうに笑うだけだ。
「お、おチビさん。こんなとこにいやがったのか」
「シャッチ!」
「お菓子作ったから食べような」
「うん!おかしだぁいすき!」
「作ってくれるサッチも?」
「だぁいすき!」
…この場でサッチに勝てる奴はいなさそうだ。
王子様の格好。本気で極めようかな。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ