番外編

□年上彼氏
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終礼を終わらせて鞄に荷物を詰める。
周りでは、部活動に向かう者や友達同士で集まるものの姿を見る。

「刹那。一緒に帰らない?」

目の前に立つのはネーナだった。
関わりたくない人間だ。何かと気に入らなければ相手を蔑む。
だが、なぜかネーナは自分にこのように構ってくる事がある。周りが言うには、半分は気に入っていて。そして、半分は自分の優越感のための道具として。

「ねぇ、刹那聞いてる?」
「ああ。だが、すまない。今日は用事がある。」

帰り仕度を済ませて教室から出ていこうとすると

「私を起こらせると恐いよ?」
「私は気にしない」

それだけ言って教室を出た。が、後ろからネーナだけでなく他の女が二人。

『面倒臭い…』

周りの人だかりがざわめく。
それでも突き進み無視を決め込む。取り巻きの女から腕を捕まれるが、無理矢理振り払う。

今日はやけにしつこい。下駄箱までやってくる3人に何かしただろうか…
その中の一人が答えを出す。

「刹那さ、今日は彼氏のお迎えなの〜?」

成る程、あいつが目的でしつこいのか。

「…」
「そうなんでしょ?」
「私達にも‘友達’として紹介してよ。」

何も話さない刹那に強引に話を進めていく。

「ねぇ、聞いてる?」
「答えるまでもなく、無理だ」

言葉を投げ捨てて校門まで急ぎ足で向かう。後ろから何か言っているのが聞こえるが先を急ぐ。
校門を通りすぎ左側に曲がる。そこには見知った車に、車の横に立つ人物。

「ニール」
「刹那、お帰り。」

ニールが自分に気付いて寄ってくる。そのままニールの腕の中に飛び込む。

「今日は珍しく積極的だな。」

少し驚いていたニールだが、自分を受け止めてクスクス笑っている。
その時、後ろから案の定出てきた3人。業と見せ付けるように胸に擦り寄る。
二人は悔しそうな顔を隠そうとしないが、声を掛ける勇気も無いようだった。が、

「刹那。今日は私達と遊ぶんじゃなかったの?」

ネーナは違った。
ニールの前で約束もしてない事を言われた。
ニールから小さな戸惑いの声が漏れた。
その瞬間、自分の中で苛つきと焦りが出た。

「そんな約束してない。」

ネーナ達を無視をして車に乗り込む。

「早く出してくれ」
「良いのか?友達は」
「あいつらは友人ではない」

八つ当たりでニールに応えると黙りを決め込んだ。車のサイドミラーから見えるネーナは此方を睨み付けていた。
どんどん離れていくネーナに興味を無くし、ニールを見つめる。

「少しは落ち着いたか?」
「…ああ」

やはり、ニールは分かっていたみたいで刹那の手を握った。その手に安心して刹那も指を絡める。

「ニール、ごめん」
「いいよ。でも、さっきの友達とは嫌な付き合いはするなよ」
「なぜ?」
「刹那に何かあったら俺が黙っていれないから。分かった?」
「…うん」

ニールの優しさに嬉しくなる。ニールの側にずっといたい。

「…今日、ニールの家に泊まったら駄目?」
「だーめ。明日も学校だろ。」
「真面目過ぎ…」

ニールの保護者っぷりがいつも邪魔していつも一緒にいる時間が短い。増して、仕事の忙しい時期になると会うことすら難しい時もある。

今日だって久々に会えたと言うのに、学校が終わってからだと本当に僅かな時間しかない…。
ニールは剥れている刹那をチラ見して、困ったような嬉しい気持ちが込み上げてくる。

「そんな顔するなって」
「だって…」

泣きそうな刹那を見ると早く悦ばせたくて、口を開いた。

「明日は週末に入るし、テストも終わって落ち着いているだろ?だから、明日泊まりにおいで。刹那のお母さんにも了承してもらってるしな」
「…分かった」

声音が明るくなったのを感じ、頭を優しく撫でた。
ニールの家に到着すると刹那はソファーに深く腰をかけた。その隣に刹那を抱き込むようにニールが座る。

「刹那も納得してくれたし、そろそろ始めるか!」
「まだ、そんなに休憩をとってない。」

ニールの手には、いつの間にか刹那の鞄から出されていた今日の課題が持たれていた。

「もうすぐ高校受験なんだから頑張らないとだろ?」
「でも、…せっかくの久々にニールと一緒なのに」
「明日もあるんだから♪」

文句を良いながらも課題を終わらせていく。それから7時過ぎになり、ニールは刹那を家まで送った。

明日の約束をして。




週末の就業時間が過ぎ、ソワソワしながらニールは帰宅の準備を始める。
この週末のために前もって仕事も見回りも終わらせたのだ。
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