番外編

□初恋 完
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「ソラン、良い子にしてるのよ」
母親の言葉に頷き、ニールの下に駆け寄った。

抱き締めてくれたニール。
嬉しくて笑顔になる。

「ニー兄、遊んで!」
「うん!遊ぼうか」

ニールの手を握ってニールの家のリビングに向かう。後ろで互いの両親の談笑が聞こえるがどうでも良かった。

「「ソラン!」」
「ライ兄!、エイミーちゃん!」

ライルやエイミーに近付き騒ぎ出す。

物心が付いて覚えてる記憶。
俺が4歳でニールが12歳だった。
月に1度俺はディランディ家に一泊していた。一人っ子の俺はこの日がいつも楽しみで待ち遠しかった。
それは、ニールが中学生になっても変わらずだった。そして、俺が小学生になっても。

俺も小学生に上がる頃には色々とちぐはぐな知識が増えていた。

「ねぇ、ニー兄」
「ん?どーした?」

もう歯も磨いて、ニールの部屋でライルもエイミーも居る中だったのを覚えてる。

「俺、おっきくなったらニー兄と結婚する!」

ライルが吹き出した。

「ソラン、お前男だろ〜」
「そうだよ〜」

笑うライルとエイミーに否定された気がしてむきになってしまう。

「二人に言ってない!ニー兄に言ったの!」

真剣にニールの顔を見ると困ったような笑顔をしていた。
ニールに否定されたと思い泣きそうになっていたら、ニールが抱き締めてくれた。

「ありがとう。ソランが大きくなってソランの気持ちが変わらなかったら結婚しような」
「絶対変わらないもん!」

ニールの目を見て即座に答えた。

また、兄さんはソランを甘やかす。
ライルの言葉にライルに舌を出しベーとしたのを覚えている。

そして、俺も中学生になった。
それでも、俺は月一度は泊まりに行っていた。ニールは大学に通っているみたいで体格も大人になっていた。ライルは就職をして何年間かは研修で家に居る事が減り、エイミーは俺と同じ中高一環校の先輩だった。

ニールとライルの部屋は仕切りで分けられている部屋だったので今はそれぞれ個別の部屋になっていた。この時期、俺はずっとニールの部屋で過ごしていた。
夜になりニールとエイミーと3人で昔と変わらず話していた。

忘れられない日になった。きっかけはエイミーだった。

「ねぇ、ソランは彼女とか作らないの?」
「は?」
「だって、」

エイミーが言うには、エイミーのクラスまでもソランの人気は凄いらしい。が、それと比率してソランは毎回断わっていると言う。

ニールの顔が見れなかった。早くこの話題を終わらせたい。

「ねぇ、なんで?」
「興味が無いからだ。もう、良いだろ」
「ほら、エイミーもその話しは終わり!ソランが困ってるだろ」

ニールの顔を見上げると右手が伸びて頭を撫でられる。心地良い手を感じ顔が緩む。

「さ、そろそろ寝るか。エイミーも明日は用事があるって言ってただろ?」
「仕方ないわね〜、明日は朝は早いし。今度はソラン逃がさないからね!」
「…。」

エイミーが部屋から出ていったのを確認して、ニールの横に座る。
それでも出ていった扉をずっと見つめていた。すると、横に座っているニールから笑い声が聞こえる。
俺の行動に笑っているのが分かるからニールを睨み付けた。

「そんなに怒るなって」
「ニール兄がいつまでも笑っているからだ」

ごめん、と言われ頭をポンポンとされる。

「それにしても、ソランも中学生なんだし好きなやつとか本当にいないのか?」

またその話かと、思ったが逆にニールの事を聞けるきっかけになるかもと思った。

「興味も無いし、今の生活を変えたいとも思わない。」
「ソランらしいな(笑)」
「そういうニール兄はどうなんだ?」
「?何が?」

こいつは天然か?この流れで分かるだろうが。若干苛つく。

「彼女、だ。」
「あー、俺は良いよ」
「何がいいんだ。大体ニール兄に彼女がいた事あるのか?」
「お前失礼な奴だな。彼女くらいすぐできるさ」
「へー…」
「信じてないだろ。なら、今度彼女作ってソランに会わせてやるよ!」


この日をどれだけ後悔したか分からなかった。一緒のベットに寝てるのに、ニールは自分の事を弟くらいにしか感じていない。
寂しくて擦り寄ってしがみつく。寝惚けたニールが優しくあやしてくれる。

この日を最後にディランディ家に行くのを止めた。
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