番外編

□年上彼氏
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「今日、リーダーが飲み行かないか、だってよ」
「ラッセすまん!今日は約束があるんだ。ミス・スメラギにも言っておいてくれないか」
「連れないなー、例の彼女か?」
「ま、そう言うこと♪後は宜しく!」
「了解した。捕まるなよー」
「犯罪にはならねーよ!」

急いで出ようとするニールに対して、後ろからラッセにチクチク言われたが気にせず出ていった。
腕時計で時間を確認すると、7時前だった。

もう、来てるよな

内心そわそわしながら、急いで家に向かった。





ガチャ

自分の家に帰り玄関には自分の物でない靴が置かれていた。
部屋に向かうといつものソファには居なかった。寝室を覗くとベッドの隅っこで寝てるわけでもなく丸まっていた。

「…お帰り」
「ただいま」

声をかけてきたのに中々動こうとしない刹那に、若干の違和感を感じた。昨日の様子からしても体調が優れない訳でないだろうと思った。
様子のおかしい刹那に近付くと、更に丸まったのが窺える。
優しく包み込むように抱き締めて顔を覗くと、瞳を湿らせていた。

「刹那?どうしたんだ?」
「ニールは私を、…裏切ったのか?」

言葉を最後まで言い終わる時には、瞳に涙が溢れそうになっていた。だが、なんの事なのかさっぱり分からなかった。きっと何か誤解をしているのだと思い、落ち着かせようと優しく手を握った。
刹那はとうとう涙をポロポロと溢した。

「刹那落ち着けって。…俺は刹那を裏切ることなんてしてないよ」
「でも、…今日、クラスの女に、画像を見せられた…」

泣きながら言葉をポツポツと喋った。

昨日の夜にクラスの友達がニールを見掛けたらしい。その時の車の特徴や顔が間違いなくニールそのものだったと言う。しかもその隣の助手席には綺麗目の大人の女性が居たと言う。
画像を見せてもらっても、その画像ではシルエットは分かるが顔がうつむき掛けていてニールなのか断定出来なかった。だから、ニールの家に着いて直ぐに車の助手席に向かって確認したと言う。

「そしたら…、いつもと違ってた」
「…」

助手席の椅子が動いていたと言う。

「刹那…」
「やっぱり…、そうなのか?」

ニールは冷静に自分の携帯端末を操作し始めた。

「違うよ。ほら、これ見て」
「え…?」

ニールが刹那に見せたものは、ニール宛の電子文字だった。

『今日の夜車借りていい?』
『別に構わないけど、明日使うと思うから明日の夕方までには返せよ!』
『オーライ』

「これ、弟からきた連絡」
「弟…?」
「そう、で、これが弟」
「ぁっ、」

見せられたものは男女が肩を寄せ合う画像だった。その男女は確かに学校で今日見せられた二人に酷似していた。
綺麗な女性、そして、隣の男性は、ニールと同じ容姿をもつ人物だった。けど、

「ニール、じゃない…?」
「刹那」

確かに似ているが区別が出来るほどはっきりと違うと思った。だが、この画像をいきなり見せられてもどうしたらいいのか分からなかった。

「これ、弟。」
「ぇ…、おとうと?」

昨日は夜いきなり弟から連絡があり、車を貸してほしいと言われたらしく、そのまま貸して、今日の昼間に返しに来たと連絡があったと言う。

「あいつも急だったみたいで貸したんだけど。でも、まさかデートに使われるとは…」
「ニール…」

ニールの言うことに納得して落ち着いたのか、刹那はニールの胸に頭を預けた。

ごめん…

小さな声が呟かれるのを聞いて、納得してくれた事を理解した。
両腕で刹那を抱き締めてやるが微動だにしない。

「刹那がいるのに浮気なんかしないって」
「…うん」

返事を返してくれた声が震えているのを聞くと、不安にさせた事が凄く申し訳なかった。
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