夢色キャスト
□僕の王子様
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今日は大事な公演の日。
「ふぁ…んん…………えっ!?」
目を覚まして時計の時刻を見ると…
起きているはずの時刻をとうに過ぎていた。
ヤバい。急がないと。
遅刻なんてしたらそーせいが…
想像しただけで怖くなる。
「と、とにかく…急がなきゃ。」
僕はすぐに準備をして家を飛び出した。
なんとかいつもの電車に乗れた。
これで間に合う…とホッとしていた。
でも、試練はまだ残っていた。
改札口を出て、DCTへと歩みを進めていると
「あのっ…」
突然二人組の女性に声を掛けられた。
「夢色カンパニーの桜木陽向君ですよね…?」
そうか、今日の公演のお客さんなのか。
「そうだよー。今日の公演見に来てくれるの?嬉しいなー♪」
「きゃああっ、そうなんですっ!」
「あの、握手してもらっていいですか!?」
「私も!!」
「もちろんだよ、おねーさん♪」
少しくらいならいいかな、と油断していたら…
どんどん人が集まってきた。
これはまずい。確実に遅刻だ。
その時。
僕の腕を誰かが引っ張った。
「すまない、急いでいる。」
少し古風な言い回し、落ち着いた声、そして、僕の腕を掴む大きな手。
正体はすぐに分かった。
「いおりん…?」
いおりんは僕を人だかりから引っ張り出した。
「全く、ファンサービスにも程がある…」
「ごめんなさい…」
いおりんは僕に背を向けたままスタスタと歩いていく。
「……次からは気を付けろ。」
その時、僕は気が付いた。
いおりんの耳が真っ赤だった。
「…ねぇ、いおりん。」
「何だ。」
「……ありがとう。」
「…っ;//」
また赤く染まる。
恥ずかしいならやらなければいいのに…
でも、僕のことを助けてくれるってことは
やっぱりいおりんは僕の王子様だ。
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