好きの反対はまた違う好き

□見ていて、見ていない
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渚said

好きだった


なによりも、誰よりも


好きだったから


嫌いになってしまった



「渚くんなんか、この世界に必要ない、消えちゃえば?死ねばいいのに」


大好きな彼に一番言われたくない言葉を言われた


悲しくて悲しくて、涙がでた


「ごめん…ごめん」

「何に謝ってるわけ?」

「告白してごめん…好きって言ってごめん…好きになってごめん…」

「男同士の恋なんて、気持ち悪すぎるし最悪わかってるよね?」

「ごめん…」


僕はこの世界が好きだ


「渚くんなんかが、居るせいで…」

ごめん、もう君の言葉が聞き取れない

「…な…さ…?お……い…!」


ゆっくりと前に進めば






広い青空が、空気が、街が少しずつ見えてくる


「カルマ君」


あと、もう一歩踏み出せば僕は死ぬだろう


「僕はね」


僕は、この世界が好きとか言っときながら、嫌いだった


母親に縛られてた世界
皆に見捨てられた世界
僕が必要されない世界

君は多分、見ていて、見れなかったんだと思う


「本気で君が好きだった」

走馬灯の様なものが目の前に写った

君が僕の厚い壁を壊して、手を引いて連れてってくれた世界


もう一度あの頃に戻れたら…


手を伸ばしても、もう届くことはない



ならひとつだけ


ひとつだけ願いを聞いて


この言葉を信じて




「大好きなんだ」











「あ…あ…あ"ぁぁぁぁっ…」
















澄み切った青空、広がる景色

普通の世界に、必要とされない人が死んだ

誰もが彼を見ていなかった


ただ一人を除いて


だがその一人も

彼を見ようとはしていなかった

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