三國夢想
□桃の花びらと共に…(蜀伝序章)
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鳥のさえずりと風の音が聞こえ一刀は目を開いた
一刀:あ、なん…?
ぼやけた思考にふとよぎるのは不可思議な出来事
一刀:そうだっ…稜!文!?
慌てて辺りを見渡すが友の姿はなく木々しか見えない
一刀:ここは…?
見知らぬ景色と身に起きた出来事に思考が止まる
一体何が起きたのか
ここは何処なのか
友は無事なのか
次々と流れる疑問のどれにも答えは出ない
途方にくれる一刀の耳にふと人の声が届いた
??:…ったくよー…
??:…でも、しょーがな…
??:…おなかすい…
一刀:誰だ?いや、とりあえず…
現れたのはオッさんとチビとデブの3人組
共通点は頭に黄色い布を巻いてるくらいか
個性的な見た目の彼らに一刀は声をかけた
一刀:すみません!
オッさん:あ?
チビ:なんだ?
デブ:ん〜…?
柄の悪い返事は気に留めず一刀は問いかけた
一刀:ここは、何処ですか?
オッさん:ハァ?
ここは琢郡の外れだが…
荒っぽい口調だが聞かれた事には答えてくれるオッさん
聞きなれない地名に首を傾げつつ続けて問いかける
一刀:じゃあ、近くに人が集まるところとかは…?
チビ:それなら、こっから2〜3里ほど行った所に小さな村があるが…
今度はチビな男が道の先を指しながら教えてくれる
一刀:そう…ですか、ありがとうございます…
(里って…古い言葉遣いだな…?)
素直にお礼を述べて背を向けようとした一刀だが…
オッさん:待ちな
一刀:へっ?
オッさん:聞くだけ聞いといてさっさと去ろうってか?
一刀:えっと…?
チビ:人が親切に教えてやってんだから
相応のお礼ってもんがあるだろう?
デブ:…んだ
呼び止められた理由に驚きながら思わず聞き返す
一刀:…お金ってことか?
オッさん:ったりめーだろうが
一刀:そう言われても…
ポケットを探るがやはり持ち歩いていない
一刀:今、持ち合わせが…
(いつもカバンの中だもんなぁ…
やっぱり近くには見当たらないし…)
オッさん:そうか、オイてめぇら
チビ:へいっ!
デブ:っス
その答えにニヤリと笑う3人組は一刀を囲むように動く
オッさん:金がねぇなら仕方ないよな?
見たことない服装だが売ればそれなりの値はするだろう…
一刀:ハッ?
オッさんはニタニタ笑いながら
腰に下がるモノを一刀の目の前に突きつける
一刀:っ…!?
それは剣だった
キラッと光る刃先は鋭く思わず息を呑む
オッさん:分かるよな?にいちゃん
大人しくしてくれりゃあ命くらいは勘弁してやるからよ
一刀:っお前ら…冗談にも…
チビ:冗談で言うかよ、見てわかんねぇのか?
首元に突きつけられた刃物の感触
間違いなく作り物ではないと分かった途端に
一刀の額に冷や汗が滲む
一刀:(マジかよ…!?銃刀法とかどうなってんだよ!)
予想外の出来事に混乱し立ち竦む
オッさん:オイ、聞いてんのか?
チビ:アニキ、こいつビビってんすよ笑
デブ:弱ぞうだもんな、ごいづ…
混乱する思考を余所に笑う3人を前に
恐怖に身を竦めるしかない一刀
冷や汗が喉を伝い寒気が襲う
??:そこまでだ!悪党ども!
その場の雰囲気を切り裂く鋭い声
オッさん:なんだっ…!?
チビ:誰だ!?
問いかけに答えを姿を現したのは黒髪をたなびかせる美少女
??:下賤な輩に名乗る名はない…
今すぐにそのお方から離れこの場から去れ!
さすれば、今回は見逃そう
整った顔に不快げな感情をのせ言い放つ少女だが
オッさん:ハァ?
何処の誰かは知らねえが
やめろと言われてやめる奴がいるかよ!
この手の輩が止まるはずがない
ましてや美少女1人に野郎が3人では
言わずもがな…
チビ:アニキっ!この女も…
オッさん:おう、ひん剥いて
俺らの恐ろしさを教えてやんな!
こうなるのがお約束って奴ですね
下卑た笑いを浮かべ近寄るチビを見やり
一層不愉快気に眉を潜めながらも
少女は怯える様子もなく手に持ったモノを軽く振るい
あっさりとチビを打ち払った
チビ:グェっ!
その手にしていたのは長い棒の先に太い刃を拵えた
いわゆる偃月刀と呼ばれる武器だと見ていた一刀は気付いた
チビ:ぅーん…
ただの一撃で倒れたチビには目もくれず
少女は手にした獲物を続けてオッさんに振り下ろす
オッさん:グァッ…!
反応も出来ず無様に倒れ伏すオッさんを一瞥する少女
デブ:でめぇっ!
続いてデブが少女に突進するが…
デブ:グハァ…!
同じく一撃で伸されれたと同時
??:お怪我はございませんか?
一刀を見やりニコリと微笑む少女
一刀:え?ぁ、大丈夫…
その美しい笑顔に一刀は惚けたような返事しか出来なかった…