月明かりを嫌う
□見破ったのはあの人この人
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「う〜〜〜ん……どれが本物の七倉ゆうさんか……田丸、どうだ?」
「いや……みんなカワユい。誰かボロが出てるんじゃないかと思ったけど……井上先輩、どうです?」
「確かに本物はすごくカワユいから誰かなりきれてないってのがいても良さそうなんだけどな」
すずちゃんとはなちゃんが纏う空気がスッと冷えたが悩む二人は気付かない。
「もしかして三郎がいるのかも」
「……ですね。あいつなら他の面子に完璧な変装を施せるでしょうし」
「もお、先輩たち、まだ決まらないんですかぁ?」
はなちゃんが微笑みながら自分の団子を差し出す。
「これが本物です。食べてくれますよね」
必殺の「ね?」と小首を傾げるはなちゃんにたじろぐ二人に、すずちゃんが追い討ちをかける。
「悩ませちゃってごめんなさい?
本当はこんな事したくないんです。
だから……私のを食べてください?」
うわーお、ウル目の上目遣いとか。
私の顔で、私の顔で……恥ずか死出来るぞこれ!
二人とも年の割にとんでもない手練れだ……!!
かくして六年生はすずちゃんのを手に取った。
ちなみにすずちゃん、はなちゃん、三郎くんは、毒団子と解毒団子を半分ずつ所持している。
渡すのは言うまでもなく毒団子なんだけど。
食べた六年生はすぐに腹を押さえてうめき始め、三郎くんから解毒団子を受け取った五年生が「うわーっ先輩!?」と叫びながらそれを六年生の口にねじ込む。
すずちゃんとはなちゃんはキャハハと愉快そうだ。
「ただの超強力な下剤ですよ〜!
解毒剤もちゃんとお渡ししたし」
「でも解毒効果、失敗しちゃって弱いんですよねー。どうぞ近くに救護所ありますからー」
うん、それきっとわざとだね。
「もう、六年生と五年生のくせに情けないわよ、すっかりくの一の術に引っ掛かっちゃって。あたしのを食べれば良かったのよ」
見守っていた伝子さんが不満げに言った。