月明かりを嫌う

□相似条件
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「……でありますから、教科のみならず実技でも、って……ぃいっ!?」

「ねえ、滝夜叉丸くん」

「は、はい……?」

「私も、君は本当に凄いなって思った。こんなに怪我してたら、私なら寝込んじゃうと思う。
でもね、私って気が弱いから誰かの怪我とか見るの苦手なんだ。
だから、そんなに元気にされると心配になっちゃう。自分でも余計なお世話だとは思うんだけど」

「はあ……いやでも……普通は元気にされたら安心するのでは?」

「無理かな。私敏感体質だから」

「へ?」

そう、これだからマズイ。
私の敏感体質は、誰もが持つカッコ良く見られたい気持ちとかプライドとかをへし折ってしまう。

でも、強がられるのは辛い。
知らずに押さえ付けられた痛みとか苦しさが伝わってくるような気がするからだ。

結局それは自分が辛いのが嫌なんだって事も分かってるんだけど、それで相手が少しでも楽になる時もあるから、私はなるべく今みたいな状況を放っとかない事にしている。


「体重かけてくれないかなと思って手を繋いでみました。
多分だけどさ、足痛くて歩き辛いんじゃない?」

怒らせるかも知れないと思ったが、滝夜叉丸くんは私のワガママを聞き入れてくれた。

「あの……では、肩を借りてもいいでしょうか?」

「うん。いいよ」

子供ならではなのか滝夜叉丸くんの性質なのか、素直さに驚くとともに嬉しくなる。


それからは、滝夜叉丸くんは大人しくなった。

やっぱり痛みが辛かったのかと思ったが、ちらりと見えた表情から、女性の肩に掴まっている状況が居心地悪いのだということが読み取れた。

幼くてもやっぱり男の子だな。

それでも、話しかけると照れたような笑顔で懸命に答えてくれるから段々めちゃくちゃ可愛く思えてくる。
これは母性本能ってやつだろうか。
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