月明かりを嫌う
□相似条件
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「おっ、滝夜叉丸に綾部、不破雷蔵……と、鉢屋三郎か。
どっちだ? 鉢屋」
ニコニコと雷蔵くんと三郎くんを見比べる。
彦太さんも感心した様子だ。
「七松先輩、彦太さん。私です」
三郎くんは満足そうに手を上げてみせた。
食堂のおばちゃんにオリエンテーリングでのお弁当のお礼を言って、食卓につく。
直後にすずちゃんとはなちゃんが現れ、私の隣に座っていた小平太くんと三郎くんを押しのけて私をはさんだ。
そこへ小助さんと仙蔵くん、長次くん、二年生の久々知兵助くんと竹谷八佐ヱ門くんがやってきてあっという間に大所帯。
元の世界のアニメで見た、主人公三人組がランチを食べているシーンでは食堂のテーブルはこんなに長くなかったし食堂自体も大きくなかったようだけど……
これだけの人数でも一つの食卓におさまるのだから、現実のこの世界では建物自体がかなり大きいのだ。
これは、掃除だけでも大変そう……
食事中はとにかく賑やかで、これだけの人数がいるのに本当に和気あいあいしていた。
上っ面だけではない仲の良さが、たとえ表面でいがみ合っても、本音でぶつかり合って認め合う、家族のような絆を感じさせる。
小助さんや彦太さんも、本当にこの忍術学園が好きなんだろう。
かくいう私も、きっとそうなのだ。
私はボッチで大人数に紛れるのが大好きだが、自分自身がグループに属している状態の大人数は大の苦手だ。
言葉の、表情の裏に隠れる小さな悪意たち。
誰もがふとした時に抱く事のあるもの。
誰にも気付かれず、あばかれずに消えていくもの。
私は、そうしたものですら敏感に感じ取ってしまうから、話に混じるのが苦手だし話を聞いているのも苦手だった。
年齢を重ねればそれは段々大きくなって私にのしかかる。
だけどここでは、忍術学園のみんなといる時は、別だ。
今まで胸につかえていた大きなしこりがふわっと軽くなって溶けていく感覚があって、生まれて初めてのその感覚は私を戸惑わせる。
困った事に、この私の気持ちが、元の世界に帰れない理由になりつつあって。
いや、気を許すのが早すぎだ。
せめてもっと時間をかけてから……と考えて、絶望的だと悟る。
何で私、時間をかける気でいるの。
一刻も早く帰らなきゃならないのに。