月明かりを嫌う

□相似条件
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「仙蔵さん、ゆうちゃんがどうしても食べたいって言ってるの」

「ちょっと待てはなちゃん! そもそも、同い年なのに仙蔵がさん付けで、何で私だけ呼び捨てなんだ?」

「るっさいわね小平太! 今は里芋の話をしてんのよ!
それに呼び捨てはあんただけというより、仙蔵さんだけさん付けなの!」

「ゆうさん! では私」

「じゃあ僕のをあげる」

滝夜叉丸くんにかぶせるように喜八郎くんが声を上げる。

滝夜叉丸くんが喜八郎くんに怒り出すと同時に八くんがニコニコしながら手を上げた。

「ゆうさん、哀車の術にひっかけちゃったお詫びに俺のをどうぞ」

「あーもう、外野はすっこんでなさいよ!」

長次くんが何か言っていたけれどすずちゃんが吠えた為にかき消される。

すずちゃんとはなちゃんは多分自分が食べたいのだろうな、仙蔵くんのを。

しかし仙蔵くんは「いらないのだな」なんて言って食事に戻っちゃうし、小助さんは呆れて苦笑するし彦太さんは「ええい、静かに食え!」と堪忍袋の緒が切れちゃうし、雷蔵くんと兵助くんはアワアワしているし。

「大体何でお前はいつもいつも私の台詞にかぶせてくるのだっ!?」

滝夜叉丸くんがお箸で喜八郎くんをビシッと指した。

「箸で人を指しちゃいけない」

のんびりと言いながら、なお私の方に小鉢を寄せようとする喜八郎くんの斜め前から、箸がカッと音を立てて飛来する。

滝夜叉丸くんが目にも止まらぬ速さで喜八郎くんの里芋の小鉢を箸でつかんでいた。
箸でつかめるのか小鉢……

「そうはさせん!」

「箸で器を寄せてはいけなーい」

喜八郎くんは言いながら滝夜叉丸くんの箸を持つ手を指で弾いた。

「あだっ!?」

うん……確実にそこは怪我の部分……

滝夜叉丸くんが箸を滑らす。
はずみで小鉢が勢いよく傾き、喜八郎くんが止めようとして間違ってどつき、どつかれた小鉢は勢いよくバウンドし、里芋が三個噴出した。

「わあっ!」

「うをっ!?」

一つは雷蔵くんの味噌汁に落下。
味噌汁が跳ねて彦太さんの顔にまで飛び「あづっ!?」と叫んでいる側で一つは彦太さんの焼き魚の目の上に無事着地。
バウンドした小鉢ははなちゃんがキャッチ。
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