月明かりを嫌う
□まさかの忍者
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side?
ここは摂津のある山奥に存在する、小さな村だ。
この村は永らくこの地にあるが、ここに住む人間に、ただの村人は一人もいない。
ある一つの重要な役割を、全ての村人が代々秘密裏に引き継いでいる。
かくいう俺も、生まれも育ちもこの村だから、重要な役目をおった一人という事になる。
そんな俺は今、得体の知れないオナゴを背に、家路についている。
「おーい、小助ェ。何だその、しょってる娘は?」
畦道を通っていると、田畑からしわがれた声が追いかけてきた。
立ち止まって振り向けば、中年のたくましい男が、日に焼けた顔をこちらに向けて立っていた。
その訝しげな顔には、ありありと警戒心が見て取れる。
その瞳に宿る眼光は矢のように、背中にある存在を射抜いている。
生まれも育ちもこの村だから、こういうのは慣れている。
この村の住人は、よそ者を異常に警戒する。
この村の成り立ちから、それは仕方ないし、俺もその一人だ。
だが今は……背中に感じる頼りない温もりに、そのむき出しの敵意が向けられるのが、何故かたまらなく嫌だった。
俺は体の向きを変えて、さりげなく彼女を隠す。
「あ、おやっさん。
いやね、薬を煎じていたんだが薬草が足りなくなったもんで、摘みに行ったらさ、」
「山に居たのか? その娘が?」
「そう」
「……で、何でお前は“それ”を連れて来た?」
おやっさんは俺の事も、疑り深い眼差しで見ている。
面倒だな。