月明かりを嫌う

□敏感体質と不運を足して二で割ると
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おばちゃんの、口からとろけていくような美味しさの料理を頂きながら、二人の忍たまを交えて談笑する。

彦太さんは私がいるからか控えめで口数が少ない。
だけどきっと忍術学園は居心地がいいのだろう、機嫌がいいのはよく分かる。


だけど食事が終わって、ちょうど先程の事務のおじさんが私たちを呼びに来るまでの一時間に満たない間に、ビビリの私の心臓が何度か止まりかけた。

「内心のビビリが一切表に出ない」と、元の世界では定評のあったこの演技力をフルに活かす事になろうとは。


中でも特に、上級生らしき忍たまが声をかけて来た時は焦った。

下級生が来た時も焦ったが、その都度伊作くんと小平太くんが助けてくれたので問題はなかった。
初めて見る人間(つまり私)に興味津々の下級生を二人は華麗にかわしてさり気無く追い払ってくれたけど、上級生だとそうはいかない。

濃い緑の装束で、今の私と同じ年か少し上に見える。
伊作くんがわざわざ「六年い組の」と前置きしてから名前を呼び掛けていたが、名前が難しすぎて覚えきれなかった。

六年生の彼は小助さんと彦太さんに軽く挨拶してから、術の習得ははかどっているかなど、簡単に言葉を交わすとこちらを見た。

というか彼はどうも私について言及しそうだぞ。

だから学園長先生に先に挨拶に行きたかったのに……!
ここでもし「お前誰?」なんて、学園に六年もいる生徒から言われてしまったらとぼけるのも難しいぞ。
今彦太さんにバレたら色々と面倒臭すぎるっ!
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