月明かりを嫌う
□変装指南
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side小助
朝食の後、先生方はオリエンテーリングの準備に駆り出され、俺とおやっさん、生徒たちは、作為的に仕組まれた事がバレバレのくじを引かされた。
配られた地図によると裏山の折り返し地点から学園に帰ってくるまでの間に合計七ヶ所の指定地点がある。
道中も罠だらけで、指定地点通過の証しも、どうやらただでは貰えないらしい。
気付いた者は少ないようだが、何人かの偽装の為の参加者を除き六年生は妨害する側に回るようだ。
ゆうもくの一教室と一緒に行動するという事だから何かさせられるって事か。
確かに油断を誘ったり、真意を悟らせない表情や振る舞いは得意のようだが……彼女に妨害なんて真似が出来るとはとても思えない。
待機中に、朝礼後から一度も見かけていないゆうが食堂へ来るかと思って足を向けたが、やって来たのはおやっさんと、よく一緒につるんでいる三年生の忍たまたちだった。
「彦太さん、私がペアです。
いけどんで優勝しましょう!」
小平太がおやっさんに笑いかけている。
おやっさんと小平太は人並み外れた体力持ちで、その点が似ているからか、普段は意外と気が合う。
だが今は昨日の件でおやっさんは機嫌が悪い。
「小平太ぁ、お前昨夜はよくもこのオレをはめてくれたなぁ」
小平太はナハハと笑い飛ばしておやっさんをかわした。
本当にこいつは、根性がすわってるな。
すると、俺の側に線の細い中性的な忍たまが立った。
三年生組の中でも最も優秀な奴で、今回の俺のペアだ。
「小助さん、立花仙蔵です。
よろしくお願いします」
「仙蔵か、久しぶり。足を引っ張るかも知れんがよろしくな」
「まぁ、あれよりはマシな気がします」
仙蔵が指した先には、小平太の頭を押さえてぐりぐりしているおやっさんと、「いてて!」と悲鳴を上げながらそれでも笑っている小平太がいる。