月明かりを嫌う
□まさかの忍者
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「何でってそりゃあ、捨て置けないだろう、色々」
「ああ、そうだ。分かってるならいい」
おやっさんはすぐに、いつもの人好きのする笑顔を浮かべた。
「ここと繋がりのある村や町に、そんな妙な格好の娘はいなかったはずだ。
何の目的でここの山に入ったのか、洗いざらい吐いてもらわんとなぁ」
にこやかにそう言ったおやっさんに、思わず苦い笑みが浮かんだ。
その後の処遇も含めてこの子をどうするか、乙名(村の代表)に決めて貰う為に寄り合いが開かれる。
お前んとこの婆さんにも声をかけといてくれよと言うと、おやっさんは田畑の仕事に戻った。
この流れは、俺が寄り合いの面々を集めろって事だな。
この子のケガを診てやって、出来れば目覚めるまで側を離れずにいてやりたかったんだが。
家に帰り着いた俺を、いつものようにお婆が出迎えてくれた。
「小助……またかい、お前は」
背中の彼女を見るなり、年の割に達者なお婆がため息を吐き出した。
「このオナゴ、山に居たんだよ。
捨て置けないだろう?」
「お前、三禁を覚えてるだろうね?」
やはり、お婆には通用しないか。
俺がこの子を、尋問の為に連れ帰った訳でないことは、とっくにバレている。
お婆はまた一つ深いため息を吐きながら、床を用意し始めた。
「全く……お前のおとうもおかあも、そうだったよ。
三禁の一、色。
情けは命取りだというのに」
ぶつくさ言いながらテキパキと看病の用意を整えるお婆も、立派に色に負けてると思うんだが。