月明かりを嫌う

□まさかの忍者
2ページ/7ページ

「何でってそりゃあ、捨て置けないだろう、色々」

「ああ、そうだ。分かってるならいい」

おやっさんはすぐに、いつもの人好きのする笑顔を浮かべた。

「ここと繋がりのある村や町に、そんな妙な格好の娘はいなかったはずだ。
何の目的でここの山に入ったのか、洗いざらい吐いてもらわんとなぁ」

にこやかにそう言ったおやっさんに、思わず苦い笑みが浮かんだ。

その後の処遇も含めてこの子をどうするか、乙名(村の代表)に決めて貰う為に寄り合いが開かれる。

お前んとこの婆さんにも声をかけといてくれよと言うと、おやっさんは田畑の仕事に戻った。

この流れは、俺が寄り合いの面々を集めろって事だな。

この子のケガを診てやって、出来れば目覚めるまで側を離れずにいてやりたかったんだが。



家に帰り着いた俺を、いつものようにお婆が出迎えてくれた。


「小助……またかい、お前は」

背中の彼女を見るなり、年の割に達者なお婆がため息を吐き出した。

「このオナゴ、山に居たんだよ。
捨て置けないだろう?」

「お前、三禁を覚えてるだろうね?」

やはり、お婆には通用しないか。

俺がこの子を、尋問の為に連れ帰った訳でないことは、とっくにバレている。

お婆はまた一つ深いため息を吐きながら、床を用意し始めた。

「全く……お前のおとうもおかあも、そうだったよ。
三禁の一、色。
情けは命取りだというのに」

ぶつくさ言いながらテキパキと看病の用意を整えるお婆も、立派に色に負けてると思うんだが。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ