月明かりを嫌う

□敏感体質と不運を足して二で割ると
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「あ、そうだ先輩」

伊作くんが爽やかに口をはさんだ。

「この間の予算会議の件について、僕ちょっと分からない所があったんです」

「ん? ああ、あれな。
それはまた明日な伊作。それより、」

そう言えばいさっくんは三年連続だっけ、と小平太くんが割り込む。

「不運委員会って予算いつも大変そうだよなー。
包帯とか傷薬とかすぐに無くなりそうだし、主に不運委員会の自滅で」

『ふうん』委員会……?
ふうんって、不運?
何ぞやそれは。
てか委員会まであるのか。

六年生は「うっ」と呻き声を上げる。

「い、痛いところを……!
おい七松小平太!
せめてちゃんと保健委員会と呼べっ!
いや、そんな事よりだな……!」

「あの、いつもご苦労様です」

保健委員会の事だったかと頭にメモしながら、私ものっかってみる。

「これ、良かったら食べませんか?」

私は里芋の煮付けが入った小鉢を、六年生の彼に差し出した。

一口含んだ瞬間昇天しそうなほど美味しくて、一番最後に食べようと取っておいた物だ。

呆気に取られる彼に、眉を下げてニッコリと微笑んでみる。

「いつも怪我人と病人のお世話、ご苦労様です」

「えっ、あ、う……え?
ああ、いやその、」

しどろもどろしながら、六年生は口ごもった。
でも、忍たまと言えどやっぱり忍者。
その上さすがに上級生ともなると、大して動揺しないな。

「あらっ、ちょっとゆうちゃん?
お残しは許しまへんでぇ!!
それから保健委員長、暇だったら手伝ってちょうだい」

思いがけず現れたおばちゃんの助け船のお陰で、六年生は去った。

視線を動かすと、こちらを見る伊作くんと小平太くんがほんの少し驚いたような顔をしていた。
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