月明かりを嫌う
□くの一になっちゃった
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「いやぁ〜、すまんすまん」
ダハハと笑いながら白髪オカッパの後頭部を掻く学園長は何だかこじんまりして可愛らしい。
「実はな、この手紙は七倉ゆう、そなたと連れ立ってきた小助がわしに宛てて書いた物なのじゃ。
そなたについてのこれまでの経緯が簡単に書き記してある」
と言って見せてくれたけど草書体は読めないよ……
それにしても小助さんいつの間に。
手紙は前日に書けたとしてもいつ渡したんだ?
忍者恐るべし。
「全く小助のやつ、例の桜の件まで持ち出しおって、わしを脅してきおったんじゃ。何としても七倉ゆうを助けよとな」
「えっ」
『例の桜の件』とやらは全く分からないが脅すっていうのは如何なものか。
私が思わず口を開いて固まると、学園長はグフフといたずらっ子のように笑った。
「確かに脅されたがそなたは気にせんでよい。
どのみち助けるつもりでおるからの」
「……っ!
あ、ありがとうございます!!」
良かった! 良かった……!
とりあえず命が繋がった!
「じゃが。一つ条件がある」
「えっ?」
「当然じゃ。正体も分からん。
本当に敵の忍びかも知れんのに、身の証を立ててやろうというのじゃぞ。
無条件に出来る事ではない」
「……は、はい……」
正論だ。
厚かましいにも程があるわ私。
どうしよう……私に出来る事ならいいけど。
すると、学園長は厳しかった表情と声色を崩し、随分穏やかにこう言った。
「七倉ゆう。
そなたの事について、包み隠さず、正直に。
全てを話してくれんかの」
その、眉毛に覆われていても分かる穏やかな眼差しに、思いがけず涙が一筋こぼれ落ちた。