月明かりを嫌う

□変装指南
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「あれ〜〜? ねえ、僕のペアで二年生の尾浜勘右衛門を見なかったかい?」

すっかり焦った様子で、伊作がキョロキョロしながら食堂に入ってくる。

俺に気付いた伊作はすぐに駆け寄ってきた。

「小助さん、ゆうさんとはもう会いましたか?」

「いや、まだ」

「そうですか……朝も食堂に来ていないようだったし、大丈夫かな……」

「朝礼の時は普通だっただろ?
心配ないと思うが」

実際のところ、ゆうは内心穏やかではいられないとは思う。
が、これは言わない方がいいだろう。
何しろ伊作は心の優しすぎる奴だ。


伊作が心配する側で、今しがた入ってきた三人の内二人が言い合う声がこだまする。

潮江文次郎と食満留三郎だ。
くっついて入ってきた一年生二人が、それぞれを必死に止めている。
あれは確か……文次郎にまあまあと声をかけているのが田村三木ヱ門で、留三郎の装束を引っ張っているのが平滝夜叉丸と言ったか。
文次郎と留三郎もそうだが、確かあの一年二人も優秀だがかなり問題があったような記憶がある。

あの二組のペアを見ると何だか嫌な予感しかしない。


騒動を全く意に介さない様子でこちらへやってきたのは中在家長次だ。

「ところで小助さんは気付きましたか」

仙蔵もあのペアや悩む伊作など気に止めることなく、話を続けた。

「上級生の中で妨害に回る生徒がいるようです」

「ああ、六年生かな?」

長次が何やらもそもそ言っている。

「ええ、加えて……五年生とペアを組んだ長次も言っている事ですが、恐らく五年生の中でも、優秀な先輩たちが敵役になりそうなんですよ」

「そうか……面倒な事になりそうだな」

学園長の突然の思い付きにはいつも大変な目にあわされてきたが、今回も例にもれず、のようだ。
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