表の顔

□お願い事
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生憎の雨だなんだと テレビでざわついていた

「折角 一年に一度の日なのに、織り姫も彦星も可愛そうですね〜」

「今年は会えないなんて…」


そんなことを聞きながら考える


「ねぇねぇ吾朗さん」

「あ?」

隣でイカのオツマミを頬張る吾朗さんを見つめ


「どうして人は織り姫と彦星が会えないと嘆くんですかね?」

「そりゃぁ…一年に一回しかりおに会うたらいけん言われてんねやったら、ワシかてそりゃ落ち込むで」

「…分からない」

「なんや?」

「だって。雨が降ったって雲の上の出来事なんですよ?星たちは雲の上のお話なのに…」

吾朗さんは何も言い返してこなかった
黙ってしまった


「…えぇんやないか?雨の日は誰にも見られず逢瀬したいんかも知れへんで」

「あぁ、そうか…」

毎年 好きな人に会うのに、大勢の人間に見られるのも気が引ける…


「私は吾朗さんにいつでも会えるから幸せ者だね」

相手の肩に頭を預ける


瞳を閉じれば 軽いリップ音を残して唇が触れ合う

ほんの一瞬


「こんな逢瀬は 流石に隠さなたまったもんやあらへんやろ?」


妖艶に笑うから
服の裾を軽く掴んで うん と小さく頷いた



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