あんスタ創作小説

□妄想の塊だね!
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『でえとしてほしいでござるよ!!』
その言葉が今も頭の中でこだまする。まあ、確かに男女二人っきりで何処かに行くのはデートと言うんだろうけど。・・・なんで私なの。おかげさまで調子狂いまくりですともええ。
「チッ・・・一個Badだった。この曲ミスした事なかったのに」
ヘッドホンを外して呟く。後ろで見ていた仙石忍は、少しだけ驚いたような表情を浮かべていた。
「イヤホンじゃないでござる・・・」
「ゲーセンでやる時はヘッドホンなの」
周りの音がうるさい場所では集中力が途切れる。だから、音が遮断されやすい(と思ってるだけかもしれないが)ヘッドホンを使うのだ。しかも、私が使ってるヘッドホンは音量ボリューム調整もついてる。高機能な愛機なのだ。
・・・そんな事は置いといて、これからどうしよう。仮にもアイツはアイドルだ。知ってる人がこんな光景見たら、どんな思いするか・・・周りに迷惑はかけたくないんだって。
「早めに切り上げようかなぁ」
小さく言葉を漏らし席を立つ。と、私の前に何かが差し出される。・・・ヒヨコのぬいぐるみ?しかも結構大きめの。顔を上げれば、アイツの姿が。
「さっき取ってきたのでござるよ」
『珠希殿にあげるでござる』なんて、笑った。・・・可愛いけど、私の部屋に置いたら兄貴がうるさいし。
「いらない。お金かけて取ったなんて重過ぎて受け取れないし」
次のリズムゲームを探すため歩きだしたと同時に、彼は言う。
「百円しか使ってないでござるよ〜!」
「・・・・え?」
今、なんて言った?百円しか使ってない・・・・?このぬいぐるみを、一発で取ったって事?私の宿敵、憎きUFOキャッチャーで?私が唖然としているとも知らず、彼は無邪気に袋から新たなヒヨコのぬいぐるみを取り出す。さっきのものとサイズは一緒。色は違う。
「もう一つと合わせて二百円しか使ってないでござるよ!」
・・・実は凄い子なのか・・・・?
押し付けられるようずい、とぬいぐるみが差し出される。有無も言えず、黙って受けとるしかなかった。忍の顔がパッと明るくなる。もう一つのぬいぐるみを抱えながら、顔を赤らめモゴモゴと何を呟いた。
「・・・・・・・い」
「なんかいった?」
「いっいえ!お揃いだなーとか一つも思ってないでござるよ!?」
心の中丸聞こえってるってか・・自爆してるんだけど。訂正しよう。やっぱこの子アホの子だ。普段もこんなペースなのだろうか・・・私は小さく頭を抱えるのだった。

あのあと、UFOキャッチャーのコツを教えてもらって五百円目でちっちゃいウサギのぬいぐるみをゲット。アイスクリーム食べて、軽く買い物して・・・・なにこれ本当にただのデートじゃん。普通の学生カップルがやるデートじゃんかよおお!!
今までこんな経験はしたことなかった私は、なんだかもどかしい気持ちでいっぱいになっていた。どうしてこんな事になったんだろう、本当に。兄貴と一緒だったらもっと早く切り上げる事が多いのに、今日は凄く遅くなったし。あああ・・・どっと疲れが・・・・・・・・。
「うちに帰ったら兄貴がなんか面倒だろうし・・・ああ、やだ。本当やだ・・・・すぐ部屋引きこもろうかな」
ぶつぶつと呟く。根暗とか言われても別にいいや。絢爛としてなくても、生きてける・・・。
「急にこんな事言ってしまった拙者も悪かったでござるよ。・・あ!拙者も一緒に兄上殿へ謝った方が良いでござるか!?」
さっきまで私の顔色を伺うようにチラチラと此方へ目をやったりしていた忍が言う。そして、閃いた!というような表情で意見を持ちかけてきた。周りはもう暗いが、街灯の明かりではっきりと顔が見えたので解る。どっか違うんだよね、この子の考え。私は小さく息を吐く。
「良いよ別に。・・・アンタも謝ったりなんてしたら、兄貴色々誤解するから絶対ダメだかんね」
「はっはい!・・でござる!」
なんだろなー、弟がいたらこんな気分なのかなー。・・・悪くないかも。甘やかしたくもなってきた。私は袋から小さなウサギのぬいぐるみを取り出す。宿敵のUFOキャッチャーに初勝利した戦利品。それを忍へ押し付けるように渡す。忍は瞳をパチクリさせたあと、戸惑いながら首をかしげた。
「あ、あの・・珠希殿、これは・・・・」
「あげる。今日の・・・お礼。ご褒美ってやつね」
相変わらず無愛想にしてしまうけど、今回は本当に感謝している。気持ちが伝われば良いのだが・・・ああ、これ多分断られるやつだ。ウサギのぬいぐるみを見つめている忍を見て、なんとなく思う。『珠希殿が努力して取ったものを拙者なんかが受け取ってしまっては無意味でござるよ!』などと言うのではないか、と。
「それは、珠希殿が努力して取ったウサギさん・・・拙者が受け取って良いものではないでござる」
大方合ってた。でも、言い方が思っていたのとは違う。暗がりの中、真剣な眼差しで見つめられているような気がした。そして”ウサギさん”と来るか・・・一部の女子はこれにキャッてなるんだろうけど、私は別にって感じ。なんか凄いギャップだとは思うけど。取り合えず、私は強引にウサギを押し付け逃げるように早足で歩き始める。
「いいの!私ヒヨコ貰ったし、お返しだから!はんぶんこだから!」
実質彼は自分でとったヒヨコぬいぐるみがもう一ついるのだが。何故かそんな事考える暇なく早足で進む。まだ・・・一緒にいても良かったのに、なんでだろう。いつもより心臓の鼓動も早い。
「ヘイスト・・・掛けられたらこんな感じなのかな・・・・・・」
夏の暑さと異常に上がった自分の体温が混ざりあった。

貰ったウサギのぬいぐるみをキュッと抱き締める。お揃いの物ができて、”でえと”をしてもらえて・・凄く楽しかった。でも、学校は違うし・・・・次いつ会えるかも解らない。一緒にいれたのも今日だけであって、明日には自分以外の、別の誰かがいるんじゃないかと思うと・・・苦しくてたまらない。気がつくと、目から涙がぽろぽろ零れてきて視界も滲んでしまい良く解らなくなってくる。・・・泣いてはいけない。好きになった人の幸せそうな顔が見れれば良いのだ。忍は、影で見守るべき存在・・・・だと思う。
「兎に角・・・一歩前進、したはずでござる」
隣が自分じゃなくてもいい。ただ、ほんの数メートルで良いから、近くにいたい。小さな忍者は小さなプレゼントを大切に抱え、歩き出した。


「珠希いいい!心配したんだぞ!?何処まで行ったんだ!?」
玄関を開けるなり飛び込んできた実の兄に顔をしかめる。予想はしてた。予想通り面倒くさいから顔をしかめたのだ。はぁ、とため息を吐いた時。ふと、見慣れない靴が綺麗に並べられ置かれている事に気づく。私は兄貴をひっぺがし、問いかける。
「誰来てんの?女の子のローファーだよね、私とは違うやつだし」
「え?ああ・・夢ノ咲とこのプロデューサーちゃんがね、俺達について詳しく聞きたいって押し掛けて来てねー」
兄貴は笑顔で答える。良かった、ナンパでもして女の人家に連れこんできたのかと思った・・疑いが晴れ安堵する。私は靴を脱ぎ捨てるように家へ上がると同時に兄へ告げる。
「もうご飯食べたから。寝る」
「へ?・・風呂どーすんの?」
「朝シャン。四時には起きるから、じゃ」
後ろから何か言ってる声が聞こえるけど、私は無視して階段を上がり自分の部屋へ向かう。袋の中身見られたくなかったし、これでなんとか誤魔化せただろう。部屋に入るなりヒヨコのぬいぐるみをとりだし、抱えたままベッドへダイブ。シーツと枕は部屋の冷房で冷えていて、ひんやりと冷たく心地がいい。火照った体が浄化されて行くよだ。
「次会ったら、どう対応すれば良いんだろ」
心地のよい空間で眠気に誘われた頃、ポツリと呟いて目を閉じた。



藤海:今日ねー、イケメンな人にあったー。カフェでお茶しちゃったんだー。
ワラクレア:良いですね。私なんか、生意気な犬と絡んでしまい今日はとてもブルーな気分ですの。
土菊:楽しそうでなにより。あ、そういえば・・・珠希が男子とゲーセンにいたの見たんだけど。昨日ステージにいたアイドルの子な。
ワラクレア:私が仕向けましたの。忍者が行きたそうな顔してたので。あと全く私は楽しくなかったですの。
藤海:晋作君がFFの最新作買うまで一緒にゲーセンにはいかないって言ってたよね。クレアちゃん、それを狙って言ったの?
ワラクレア:勿論ですのよ。私の目は誤魔化せないですの!
土菊:おー怖怖。んじゃ、私もー寝るわ。疑問晴れたし。お休み。
藤海:私も寝よー。お休みなさいー
クレア:お兄様とお話してから寝なくては・・お休みなさいですの。
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