あんスタ創作小説

□妄想の塊だね!
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「花火大会前にライブぅ?」
ますさんが面倒そうに顔をしかめる。そこをなんとか!と、俺はおもいきり頭を下げた。龍馬君が若干あとずさったのは気のせい。きっと。
「夢ノ咲にいたプロデューサーちゃんに頼まれちゃったんです!お願いしますこの通り!!」
ますさんの重いため息が上から降ってくる。俺は・・女の子に頼まれると弱いんだ!昨日、プロデューサーちゃん事九埜実あんずが突然家にやってきた。内容は狼幕の練習内容とかの話。でも、帰り際にあんずちゃんが『花火大会前にやるライブを一緒にやってほしい』と頼んできたもんだから、吃驚仰天。ちょっと前に気になる出来事もあったし、条件付きでますさん達に話をつけてあげる事になったのだ。その条件というのは、
「俺のためでもあるの!可愛い珠希に何かあったかも知れないんだ・・・!!」
「なんすか、それ。どーいう意味?」
龍馬君が首をかしげる。グラバーさんはなんか苦笑いしてたし、ますさんは相変わらず渋い顔のままだ。・・もう!言わせないでよ!珠希に何かあったって事は、あれしかないでしょ!全国の妹大好き兄貴達が絶叫する、あれ・・
「仲の良い男が!できたかも!知れないッ!」
「・・・練習初め」
「話を最後まで聞いてください!!ね!?」
スルーしようとしたますさんを滑りこみでとめ、俺は更に続ける。
「昔から不器用だったあの子が・・・昨日、UFOキャッチャーでぬいぐるみをとってきたんだ!しかも大きめの!絶対誰かが珠希のためにとったんだ!違いない!」
俺の熱弁がダンスホールに響く。暫く沈黙が続いたあと、おもむろにグラバーさんが喋り出した。
「つまり・・晋作は、夢ノ咲にいるアイドルの誰かが、珠希ちゃんと親しいんじゃないかと睨んだ・・って事で良いのかな?」
グラバーさんの予想は当たっている。俺は熱弁の勢いを殺さずに『はい!』と言ってしまったものだから、グラバーさんは少し驚いてしまったらしい。ビクリと体を震わせ、少し身を引いた。ああ、やってしまった。こういう所が良くないと珠希にも言われてしまっている。どうにかしなきゃ・・・。
「すんません、俺」
「いいや、別に気にしなくても良いよ」
頭を下げれば、グラバーさんは柔らかい笑みを浮かべた。・・ と、ますさんが再び息を吐き、言葉を紡ぐ。
「上から何も依頼は来てない。無理だ」
「う・・そんなあ・・・!」
「だが、」
一時は絶望を感じた一言が、一変する。ふり返ったますさんは困ったように頭をかいて続けた。
「言っても聞かねぇしなぁ、馬鹿だし」
ちょっと頭にキてしまったけど、本当の事なので大人しく言い返さないでおく。・・言い返して『やっぱやめた』とか、機嫌損ねたくないし。緊張でドキドキと心臓が高鳴り始めた時。
「上へ頼めばいける、はずだ」
希望の光が差しこまれたような気分だった。顔が暑い。興奮で紅潮してしまっているだろうか。俺は勢いよく頭を下げる。今度は申し立てではなく、感謝の意味を込めてだ。
「有り難うございます!!」
「うひい、練習量増えるなこれ」
龍馬が小さく悲鳴をあげた。そんな彼にグラバーさんはクスりと笑う。
「嬉しいくせにっ」
「・・・まぁ、そうなんすけどね」
グラバーさんの言葉に龍馬は、笑みを浮かべる。こういう時、このユニットに入って良かったと思えるのだ。ノリが悪くて衝突しちゃう時もある。けど、何だかんだ最終的にはやってやろうってなって。昔の俺だったら、こんな事できなかっただろうし。狼幕が俺ん変えてくれた。改めて、それを実感できた日。



「あっ!okです!okもらいました!」
待ち望んでいた文字がスマートフォンの画面に表示され、私は小さく叫ぶ。休憩していたメンバーが、一斉に集まってきた。
「よかったぁ」 「燃えてくるな!」なんて言葉が聞こえてくる。私もプロデューサーとして、ひとつ皆に貢献できただろうか。ふと見れば、忍君が顔を赤くさせているのが見えた。
熱でもあるんじゃ・・と、私は心配になって問いかける。
「忍君、大丈夫?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「忍くーん、大丈夫ー?顔赤いけどー」
「はひっ!!?だだっ大丈夫でござるよ〜!何でもないでござる、本当に!!」
・・・大丈夫じゃない。声が届いてなかったし、何かすごく挙動不審になってるし。これ、時々忍君が嬉しい時に見せるやつだ。狼幕の誰かと友達になれたのかな・・・?と、鉄虎君がニヤニヤと笑みを浮かべ言う。
「くう〜っ!青春っスね!仙石君、もう告白とかしちゃったりするんスか?」
・・・・告白?忍君の方を見やる。彼はさっきよりも真っ赤になっていて、まるでゆでダコ状態。『はぅ』とか『えっと』とか、言葉になってない言葉が漏れていた。しかしすぐに我に戻ったのか、顔は赤いまま忍君は叫ぶように言葉を返す。
「てとらくん!!なっなにいってるでござるか!?しないでござるよ!?そんな勇気がそもそもないでござるし!?」
あんまり呂律が良くない。口が回っていないんだろうけど、告白する相手がいる事は否定しないんだね・・・。いつの間に・・・と、私は忍君にジットリとした視線を送る。
「ううっ・・・ 隠すつもりはなかったでござるよ?でも、その・・・・恥ずかしくって、言えなかったというか・・・・・」
反対に、忍君は視線を逸らす。落ち着かないのか、まだ少し赤い顔のまま胸の前で手をモジモジと動かしている。
ずるいよ・・・
「・・・ずるいよ!私もそういう人ほしいのに!忍君が羨ましくてたまらない!」
忍君どころか鉄虎君までもが目を丸くした。私そんなに可笑しな事言ってないのに。なんだか視線が痛い・・。たまらず翠君に駆け寄り、意味もなく彼を軽くポカポカ叩く。
「ねぇ翠君!今すぐにでもレンタル彼氏とかやってくれないかな!?」
「え、えっと・・俺に言われても困るって言うか・・・・」
彼もが私から視線を逸らすという始末。そろそろ泣きそう。次は千秋先輩にSOSをかける。・・・何かと鈍感な先輩は多分気づいてくれないだろうけど。いつものテンションなら強めのスキンシップをしてくるはず!『抱き締めてやろう☆』とか!
「千秋先輩ー!後輩の視線が痛いです!」
「はっはっは!そりゃ大変だなぁ!だが、逃げてるだけでは意味がないぞっ」
千秋先輩は私の頭をわしゃわしゃと撫でる。・・・撫でてる!?予想外の出来事に私は『あれ!?』なんて声をあげてしまった。
「ん?どうした?」
千秋先輩は首をかしげる。ああそうでした、彼色々と鈍感でした。
「いつもなら抱き締めるはずなのに!」
「んー?俺のスキンシップにも色々あるじゃないか。なんだ?抱き締めてもらう方が嬉しいのか?」
ついていけない・・・この人達のテンションに。しかも奏汰先輩いつの間にか消えてるし・・ また水遊びしてるのかな。でも、どこか楽しくて。とても居心地が良い。

この時から、実は千秋先輩にも色々あったなんて事に全く気づかず思うのだった。



「やーだー!」
強引に腕を引っ張られる。周りには人、人、人。目の前にはステージ。残暑残る中、私は何故か花火大会があるという会場に来ていた。先輩達に強引に連れてこられたのだ。
「ここなら綺麗にお兄様が見えますわ!」
クレアは何故か凄く喜んでるし、海も辺りをキョロキョロと見渡している。・・・もう、帰りたい。
と、ライブが始まってしまった。慌ててイヤホンをする。が、見覚えのある人物を見つけてしまい悟った。
・・・・・・これ、今日早く帰れないパターンじゃ・・・・・・・・・・?
私を見つけたのかどうかは解らないが、此方の方を見てはにかみを浮かべる仙石忍に、私はため息を吐くのだった。

ライブ終わり。裏方に引きずられていけば、真っ先に小さな黄色い影が近づいてくる。
「珠希殿ーっ!」
「うわああ!?やっめ、ろ!馬鹿!」
その小さい影は私より大きいため、簡単に私を覆い被せてしまう。・・はい、急に抱きつかれましたとも。突然の出来事に足元を滑らせてしまう。これで一緒に倒れこんじゃったら色々マズいんだけど・・・?あああ!どうしよ!パニックはすぐに収まった。というのも、倒れなかったから。ぐっ、と体制を引き戻された先には、仙石の姿。
「ぁぁあああ!申し訳ないでござる!!どこか痛いとか・・」
「ないから!ないからもう離せ!!」
視線が痛いの!実の兄の!目が死んでいらっしゃるから!ていうか・・・意外と力あるんだ、コイツ。男なんだ・・・と、改めて実感する。いや別に?コイツはただの迷惑なヤツっていうか、弟としか思ってないというか?
・・・そう思ってる相手に、ドキドキなんてしないはずなのに。
「もー!早くしてよ庶民達!僕らお腹ペコペコなんだよ!?解る!?」
と、黄色より更に小さいピンク色のヤツが顔をムスッとさせながらピョンピョン跳ねる。可愛いけど今、庶民って・・・確かに庶民だけどさあ?あざといってやつか、これが。
「我も!“たこやき“という物を早く食べたく!」
続けて声をあげた青年も、なんか他と違う。時代間違ってない?大丈夫なの、夢ノ咲変な人集まり過ぎだろ・・・。
「はあー・・成る程。あとは好きに花火大会を満喫してくれって言われたのか」
菊音さんがニヤニヤしながら真澄さんに言う。確信犯だろうな。真澄さんは苦い笑みを浮かべた。
「ご名答。晋作がねーちゃんらとも一緒に行きたいからって、呼び出したわけ」
クレアはグラバーさんの所行ってるし、海も夢ノ咲のプロデューサーに話しかけてるし。完全にoff状態。・・・これは、何を言っても逃げられないやつだ。私の休日がまた消えて・・・?どこかデジャウ感を感じた所で、目の前の忍者が顔を若干赤くしつつ問いかけてきた。
「あ、あの!よかったら・・・」
「あーはいはい。一緒に回りたいって言いたいんでしょ」
予想は大体できていた。図星だったらしく、仙石はギョッとする。何かと絡んでくるのには疑問があるし、私は人付き合いが苦手。周りに迷惑かけたくないのに、コイツは・・・。私は小さくため息を吐いた。
「近くに射的屋あるから、そこで待ってて」
「えっ・・・珠希殿、すぐ行かないの・・・・・?」
突然砕けた忍者口調に私は驚きつつも、小さく頷く。色々話したい事があるから・・今行けば空いてて、めちゃくちゃやり易いと思うんだけど。残念だ、兄貴のせいで。
「ごめん。色々あってすぐ行けなくてね」
「全然大丈夫でござるよ!・・では拙者、先に向かっているでござる!」
シュタタっという仙石自身がつけたSEと共に去ったあと。私は兄の元へ近づいていく。兄貴はジリジリと後ろへ退いたが、後ろには壁。追い詰められた兄貴に、私は問いかける。
「なんで、そんな事言ったわけ・・・!!?」
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