あんスタ創作小説

□妄想の塊だね!
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「やっぱアイツなんだろ!?イエロー忍者君なんでしょ!?UFOキャッチャーのぬいぐるみの正体は!」
我ながら名推理である。あの仲良し具合(晋作以外は忍が一方的に好意を寄せてるように見えてる)、サラッとデートにまで誘いやがってあの忍者・・・!(晋作以外は弟にせがまれた姉の図を見ているように思っている)俺の大事な珠希を取ろうなんて邪な考え・・・
「お兄ちゃんは許しませんからね!!」
「そのノリなんなのいい加減ウザい!」
思った事を口に出しただけで殴られるなんて・・・。世の中は理不尽だと常々思う。いつの間にか他のメンバーは外へと繰り出していて、珠希と二人っきりになっていた。
まだ痛む腹を擦りつつ、俺は問いかける。
「どう、思ってんのさ?あの忍者君の事」
「どうって・・・」
珠希は小さく目線を逸らし、顎に手をやり考える。そんな姿も可愛い、と親バカに似た思考を巡らせたが、すぐに現実へと引き戻った。危ない危ない・・・確かに可愛いけど、今はそれ所じゃない。もし珠希もあの忍者君の事が気になってたり好きになってたりしたら・・・絶対くっついちゃうじゃないか。暫くしたあと、珠希がポツリと呟いた。
「・・弟がいたら、あんな感じかなとは思ったけど・・・・」
「弟・・・つまりセーフ!」
好きという単語が出てこないでホッとするなんて事、これぐらいしかないのでは。ガッツポーズを決める俺に冷たい視線を浴びせ『なんなの・・・』と珠希が呟いていたのは気のせいだきっと。
兎に角。珠希から忍者君へ行く事はない。だが、もう一つ不安要素がある。それは・・・あのオトオドしてる忍者君が積極的かつドキドキな行動に出たら?珠希は、どう反応する?
「忍者君を見てどう思う?」
「・・・・癒し?」
「突然押し倒して来たりとかしたら!?」
「まずそんな度胸あの子にないと思うんだけど」
彼女の反応を見る限り、忍者君からのモーレツアピールには気づいていない様子。というか・・・気づかない方が逆に凄い。どこか一部鈍くて不器用な珠希も可愛い、と。また脳内の楽園へと戻りそうになった所で、ひんやりとした声が。
「もういい?私早く行きたいんだけど」
いかにも『不機嫌です』というような表情を浮かべた珠希が腕組をして待っていた。相当怒ってるなこりゃ。
「うん・・・・。いいよ、ありがとね」
さっきとは違い全く覇気のなくなった態度に驚いたのだろう。暫く珠希はその場に立ったまま、俺を見つめていた。そのあと、一言残して裏方を出ていく。
「変な兄貴」
昔よりも表情豊かになって、強くなった妹に一人安心するのだった。
「・・・・・・・・・・・・」
小さな忍者が全て聞いていた事も知らずに。


いつもより深刻そうな顔に俺は驚く。馬鹿みたいに周りの話を聞かず、笑顔を浮かべていた彼にしては珍しかった。プロデューサーの女も目を丸くしている。
「なぜ俺を避けているのか・・何か悩み事がないのか。心配なんだ」
俺に持ちかけられた相談。女絡み・・でもまあ、気に入ってたヤツが突然自分を避けるとか、確かに何かあったんじゃないかって思う。昔のいらない記憶を思いだしてしまい、頭を振った。
「・・・・協力、してくれないか」
人生は士道。人は助けると決めた。士道に背くのは・・・嫌だ。
「何すりゃいい?・・・これで駄目だったら、スッパリ諦めろよな」
残暑残る花火会場で、一つの作戦はひっそりと決行された。



「メルキーが・・30箱。中々上出来かも」
さっき話していた事がまだ頭の中で回っている。自分は、単に”弟みたいな存在”としか思われていない。そしてあまり相手にされてないという事も同時に知ってしまった。・・・凄く、痛い。思い出すだけで涙が出そうだったが『バレてはいけない』と、なんとか堪え続けている。隣では珍しく楽しげな笑みを浮かべる想い人。そんな人の前で、涙を見せるなんてできないから。
「・・大人しいね。さっきまであんなに嬉しそうだったのに」
不思議そうに彼女は首をかしげる。手には射的で取ったお菓子が入っている袋を持っていた。なんだか目を合わせられなくて、視線を逸らしてしまう。
「う、えっと・・・あっああ!お腹がすいてしまって!ちょこっとはしゃぐのを抑えていたのでござるよ!」
苦し紛れの言い訳。・・バレるかと思ったが、怪訝そうに顔をしかめられただけで。そのあと、彼女は突然袋をあさり始める。目を丸くしていると、袋から出てきたのはさっき取ったソフトキャンディのお菓子。
それを、差し出してきた。
「へ・・・?」
「流石に取り過ぎたしね。一箱くらいどうって事ないと思うけど」
くれる・・という事でござるか!?ぷれぜんと二回目でござる!どうしよう!途端に顔が暑くなる。嬉しさでなのか、興奮でなのか、良く解らないけど。・・・・兎に角、幸せだという事は感じられた。
「拙者、感激でござる〜!」
今はまだ、隣にいても・・・・。


結局来てしまったけど、別に関わってないし・・・大丈夫だよね。
不自然な程周りをキョロキョロしつつ人混みを歩く。同級生がいたら即逃げれるようにしているのだ。人混みで既に紛れている可能性も高いが、安心はできない。
・・・みんな知ってるだろうし。来てる可能性が高い。先輩いつも通りだったし、それを見れただけで良いか。あまり欲を発揮したら、多分罰が当たるから。
「帰ろ・・・」
きびすを返し、賑やかな屋台が並ぶ道とは逆方向へと歩く。刹那、肩に手を置かれ無意識にふり向いてしまう。目の前には、あの人じゃなかったけど・・・ステージで一緒にライブをしていた人の中の一人だった。
「・・・ん。多分コイツかな」
男の人がポツリと呟く。嫌な予感・・・慌てて逃げようとするが『まぁ待て』なんて、すぐ捕まってしまう。
「頼まれたんだよ。流星隊のレッド君にな」
その言葉に、私は凍り付くしかなかった。


「・・・げっ」
人が通る中、目の前に現れた人物が苦い顔する。私もその顔には見覚えがあり、同時に嫌な感情が渦巻いた。隣にいたお兄様は小さく首をかしげている。なんてBatタイミングなのですか・・・。男・・大神晃牙はまるで犬が威嚇しているかのような態度。怒鳴りにも似た言葉が飛んでくる。
「なんでテメェがいるんだよ!!!!」
「それは此方の台詞ですの!・・・犬が散歩する時は、飼い主がリードで誘導するのがルールですのよ?」
「だーれーが犬だ!!」
安い挑発文句にもノってくる彼は本当に犬みたいだ。先週の休日、私が料理道具を見ていた時に彼がツッかかって来たのがきっかけでこれだ。誰にでもこんな態度だと思うと、周りにいる人達も『苦労してるんだな』と思ってしまう。それくらい彼には呆れていた。と、お兄様がそっと声をかけてくる。
「クレア・・この人は・・・?」
私の気分を悪くさせないようにと気遣っているのだろう。流石お兄様。気遣える人って素晴らしい。心の中で感心したあと、お兄様に言葉を返す。
「先週の休日、私にツッかかってきた飼い主の言うことも聞かないただの犬ですの。気にしないで?」
「なっ・・・!?」
此方が上手く言い返せば相手も黙りこむ。お兄様に迷惑をかけることもないし、これぞ一石二鳥。ドヤ顔をしてみせれば、彼は私を睨み付ける。負け犬の遠吠えとはこの事ね。
「?・・・真澄が?でも、なんで・・・・」
刹那、お兄様が呟く。お兄様の視線の方向へ私も目をやれば、そこには土方さんの姿。後ろには星のピンをつけた女の人が引きずらるように、土方さんの後を歩いていた。・・・なんですの、あれは。首を傾けていると、お兄様が歩き出す。土方さんのあとを追うつもりなのだろう。
「・・・・お兄様!!?」
今そんな事されたら、私はこの犬とまた二人っきりになるじゃない・・・・!!そんなの絶対嫌ですの!!声をかけた時、もうお兄様は駆け足くらいの勢いがついていて・・・当然止められなかった。
「ごめんクレア。終わったら連絡するっ」
「あっ!!・・・お兄様・・・・・・・・・」
人混みの中立ち尽くす。うるさいと思っていた音が、どこか遠くに感じた。暫くキョトンとしていた犬は、口角を上げ言う。
「兄貴にフラれるとか、相当だなお前!!ザマァみやがれ!」
その声は、私の中で虚しく響き渡るのだった。
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