キングダム(学、現パロ)創作小説とか

□学園王国
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「んーっうまー!」
焼きそばを頬張り一言叫んだ。公立秦高校の古文、現代文教師の閃愛。彼は仕事終わり近くの商店街で夕食をとっていた。
「へへっ。だろー?」
「俺達が作った訳じゃないだろ?俺達は運んできただけ」
「解ってるって!」
お盆を持った学生二人が楽しそうに言う。公立秦高校に通っている普通科の一年生、信と漂。ここの店を手伝うと同時に居候させてもらっている。二人共、幼い頃既に両親は他界していたらしく、その似た生い立ちがきっかけで仲良くなったんだとか。ちなみに、俺が受け持ってるクラスの生徒だったりする。
「壁さんこんな料理上手いのに、なんで結婚してないのさ。不思議だね?」
舌鼓をしつつ、料理を作った張本人の名前をあげる。ここ、壁屋のオーナー壁さんは独身。そのおかげでこの二人を居候させる事ができるらしいのだが、こんな家庭的な人が結婚してないというのは驚きだ。宝の持ち腐れ、とはこういう事だろうか。
「壁さんは結構な不器用ですから・・・」
「でも最近、惚れた女できたっぽいぜ」
苦笑いを浮かべる漂に信が声を潜めて言う。それに心底驚いたのか、漂は『え!?』なんて、体が少し反るくらいオーバーリアクションを見せた。平和だなぁ。そして青春してるのが羨ましい。・・・明日のビッグ情報、この二人に特別教えてやろうかな。
「お前ら。明日は一限なんだった?」
突然聞かれて驚いたのだろう。二人は少しの間固まる。先に口が動いたのは信だった。
「・・へ?どーとく・・だったよな?」
「あ、ああ・・・そういえば、いつもはない朝会がある・・・先生、何かあるんですか?」
相変わらず漂は勘が鋭い上頭の回転も早い。話がスラスラ進む。クスリと笑ったあと、俺はゆっくりと口を開いた。
「お前らが大好きな、転校生が来るんだよ」


昨日の会話を二人で思いだしながら通学路を歩く。にしても転校生かー・・政以来だな。此処に入学して二日三日経ったあと、転校してきた贏政を思い浮かべる。私立の方へ行く予定だったらしいのだが、トラブルがあったとかで此方に通うことになったとか。
「良い情報もらっちゃったな」
『普通なら教えてくれないのに』と漂が笑う。閃愛はあまり人に情報を教えない。そのせいで、この前は古文のテストを突然受ける事になったし。勿論自分は全然解らなかったし、漂はそれなりにできていた。トップは政だったらしい。羨ましい限りだ。
「けどさー、教えてくれるならもっと違う情報教えてほしいよなー」
「テストの答えは流石に無理じゃないか?」
「なんでそう決めつけんだよ!」
漫才じみた会話。その横を素通りしていく少女を見つけ、思わず声をかける。シュシュでひとまとめにしていた髪が、此方に振り向くと同時に揺れた。
「羌カイ!」
「・・・なんだ」
綺麗な顔立ちに表情は浮かべていない。羌カイ。入学当初からいたが、今でも謎だらけの少女。家に遊びに行こうとすれば拒否される。漂には『女の子だし、男に入られるのは嫌なんだよ』なんて言ってたけど、彼女は性別関係なく自分の家に入れる事を拒否しているのを見た。興味と同時に、どこか気にくわないという感情が渦巻く。
「おはよ!!」
とりあえず、謎を探るため今は仲良くなる事に専念している。挨拶も大事・・・のはず。相手は怪訝そうに小さく表情を歪ませた。
「・・・・それだけか?」
「なっ!?そ、それだけって・・・・挨拶は大事なんだぞ!!?」
コイツ挨拶しないのか?そんな疑問が頭の中で横切る。というか、コイツ不快そうな表情以外見たことない気が・・・。無意識にマジマジと顔を見ていたんだろう。その圧力に羌カイは小さく体を反らしたあと、ため息を吐いて言う。
「・・・はぁ。言えば良いんだろ?おはよう・・・これで満足か?」
「へ?お、おう・・・・」
自分でも予想外だったため気の抜けた声が出てしまう。慌てて返事を返したものの、後ろでは笑い声。どうやら漂のネタになる事は間逃れられなかったらしい。後で覚えておけよ・・・微妙な空気が流れる中、ただ漂を睨む事しかできなかった。



「んじゃ始めっぞ。一限が道徳の意味は」
「質問タイムって訳だな!」
「・・・・おうよ」
華麗に決めようとした所を河了貂に遮られる。腑に落ちないが、言い合いをしても進まくなる。俺はそのまま話を続ける事にした。ひとつ間を置いてから、転校生の少女へ視線を向けて言う。
「はい、改めて自己紹介よろしくー」
それに少女は小さく呟く。激しいテンションの温度差が痛かった。
「・・・・幽義」
一部の男子が小さく息を飲んだ。羌カイが転校してきた時もこんな感じだったなぁ。義はどうでも良さそうに教室中を見渡していた。
「質問とかある人ー」
その言葉と同時に数人の手が上がる。誰にしよーかなーで決めた結果が我呂だったので、我呂に当てる。
「家族構成とか聞きてーなー」
「えっ・・我呂にしては珍しい質問だな」
「んだと!?」
確かに。てっきり『彼氏いる?』みたいなノリで来ると思ってたんだけど・・衝撃だ。我呂がそれに気づいたのか俺まで巻き込んで来る。
「センセーまで意外だと思っただろ今!!」
「おいおい!飛び火はないって!」
言い争いが始まり騒がしくなる中、隣から小さく声が。
「家出してきたから、今此処にはいない」
沈黙。一瞬で場が凍り付いたよう。義は状況が理解できずにいるのか、首をかしげていた。それを破ったのは信の驚きが混じった声。
「家出ェ!?」
「まさか・・今、一人暮らし?」
それに続けて貂が言う。義は小さく横に首を振った。
「住まわせてもらっている場所がある。一人暮らしじゃない」
「居候・・・・なんか俺達みたいだな」
漂が呟く。『あ!本当だ!』それに信も同意した。・・・案外馴染めてる。これは殺されずに済むな。二日間の出来事を思いだし、肩を下げた。

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「君が勤めてる学校に”僕達”の身内が通うことになるから、君が受け持つクラスに来たらよろしく頼むよ」
にこやかにしているように見える男。否、昔からこの顔なので笑顔という訳ではない。
「あんま関わりたくないんだけど。つか”お前ら”んとこで居候してるとか・・・どんなヤンキー?」
そう眉を潜めれば、相手の唇が尖る。
「失礼だな。ヤンキーじゃないよ、可愛い子さ。“ボス“もデレッデレ」
『あ、ちなみに僕もね』と右手の人差し指をピョコリと立て言葉を付け足す男。ため息が出る。コイツと関わるとやはり面倒だ、と。
「ははっ。そんな顔しないでよ」
「うるせぇ。元からこーなんだよ」

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「・・・はぁ、命拾いした」
時刻は正午過ぎ。職員室でコンビニ弁当を食しながら呟く。ついでに余計な事も思いだしてしまい、少し気分が良くない。近くにいた蒙ゴウが特徴的な笑い方をしながら声をかけてきた。
「フォフォ、随分と物騒な目にあったらしいのう」
「まあ・・あながち間違っちゃいないか。確かに物騒なヤツには会いましたし」
怒らせたらマズいタイプの上、10以上年下の女の子にデレデレしていらっしゃる、あの男。動物で例えるなら・・猫か、虎か。兎に角色々とヤバい旧友の顔を再び思いだしながら呟く。
「・・・・あの子に何かあったら俺がぶっ殺されるんだろうな・・・・・・」
想像するだけで寒気がしてきた。周りの教師は『お疲れ不憫枠』と言わんばかりの哀れみを含めた視線を俺に浴びせるのだった。
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