☆頂き物☆
□玄冬の桜 ほか2編
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その1
玄冬の桜
夢を見た。
満開の桜が、青空に散っていく。
あの時と何も変わらない、好きな景色。
少しずつ桜以外の景色は四季を漂わせるように変わり、日が昇り暮れ、また昇り、満開の桜には似合わない冬空になった。
はらりはらりと花びらと雪が交互に散り始める。空は太陽の光が薄紅を引き、雲が薄く白化粧していく。
冬の夕暮れは満開の桜と合わさってそれはもう、幻想的だった。
けれど、そこに少女はいない。
桜の下で団子をくれた、あの優しさしか知らない少女はいない。
夢ならば、もう一度あの優しさを思い出させてくれたっていいのに。
こんなに切なく冷たい景色なんかより、雲ひとつない青空が見たいのに。
まるで少女みたいな────。
全てを溶かす暖かい春が待ち遠しくて、早く覚めればいいのに、と思った。