☆頂き物☆

□玄冬の桜 ほか2編
1ページ/3ページ

その1
玄冬の桜

夢を見た。

満開の桜が、青空に散っていく。
あの時と何も変わらない、好きな景色。

少しずつ桜以外の景色は四季を漂わせるように変わり、日が昇り暮れ、また昇り、満開の桜には似合わない冬空になった。

はらりはらりと花びらと雪が交互に散り始める。空は太陽の光が薄紅を引き、雲が薄く白化粧していく。

冬の夕暮れは満開の桜と合わさってそれはもう、幻想的だった。


けれど、そこに少女はいない。
桜の下で団子をくれた、あの優しさしか知らない少女はいない。


夢ならば、もう一度あの優しさを思い出させてくれたっていいのに。
こんなに切なく冷たい景色なんかより、雲ひとつない青空が見たいのに。


まるで少女みたいな────。


全てを溶かす暖かい春が待ち遠しくて、早く覚めればいいのに、と思った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ