☆頂き物☆
□バレンタイン♪
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「何これ」
「…あの、ちょこれいとと言う南蛮の甘味なんですけど」
「ふーん」
私が差し出した小箱にチラリと視線を落とした景家様は、ちょこれいとの説明にさして興味も無さそうに相槌を打った。
私が京にいた頃に若い女の子の間で流行っていた南蛮の風習である“ばれんたいん”はまだこの越後の地にまでは来ていない。
「南蛮には殿方にこのちょこれいとを渡す日があるらしくて」
「へえ」
だからこそ私は今、景家様にちょこれいとを渡している。
伝える事の出来ない気持ち。
伝えてはいけない気持ちを、こっそりとちょこれいとに込めておいた。
ばれんたいんを知らない景家様は、きっと私がただ珍しい南蛮の甘味を持って来ただけだと思っているだろう。
「これ、くれんの?」
「はい。」
長く節ばった指先が私の手の中に有る小箱を軽々と持ち上げた。
とくん…と、胸の奥が甘い音を立てる。
私の気持ちを込めたちょこれいとが、静かに景家様の元に渡った。
ただ、それだけで十分。
好きな気持ちを伝える事も、この気持ちを実らせる事も望んでなんて居ない。
ただ傍に居られる、それだけでいい。
「では、私はこれで」
景家様が小箱を受け取ったのを確認して頭を下げた。
さり気なさを装った、私だけのばれんたいんが終わる。
ほっと息を吐いて背中を向けた
その瞬間、思いがけず大きな手が私の肩を抱き寄せた。
「きゃっ」
突然の出来事に思わず声を上げると、頭上から何処か楽しげで、でも気だるげな声が降ってくる。
「お前、俺のもんになったんだよね」
「へ…? っ…!」
呆気に取られて見上げれば、すぐ真上に妖艶な笑みを浮かべた景家様の顔が有り、思わず息が止まってしまった。
「だって今日ばれんたいんだって、よっちゃん言ってたし」
「…え…」
「だから、お前、俺のもんでしょ」
ニヤリと上がった片頬と、緩く力の込められた肩を抱く手が「何の日かを知っている」と物語っている。
「え…あ、あの…」
戸惑う私を尻目に、満足げに笑った景家様が空いた手で小箱を摘んで揺らす。
「もう受け取ったから返さないし」
こうして、私のばれんたいんは思わぬ形で実を結ぶ事になったのだった。
終わり♪
ちょこも姫様もかっきーのもの…(*´д`*)
欲張りさんめ!(*ノノ)
そんなかっきーのマイペースさが大好きです…//
武村様、ありがとうございました!!(*≧人≦*)
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