◇◆樋口与七◆◇

□秋色の心
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山が恋に落ちたように
彩(いろ)付く。

赤く
紅く

それぞれに恋がれる彩葉(いろのは)

「ねぇ、兼続!お願いだよ!
早くしないと、いってしまう!!」

私が今、身を寄せている
春日山の城主・上杉謙信様が
近臣の直江兼続様に何かをお願いしているように見える。

庭で皆様のお洗濯を干していると
そんなやり取りが聞こえてきた。

ちらりと
視線を感じたと思ったら
謙信様が私の方に来られる。



私の肩に手を置いて
ぐいぐいと押す。

「あ、あの、謙信………様?」

とうとう
兼続様の前まで訳がわからぬまま
進んでしまう。

「名無しさんも、見たいよね!」

「見たい?」

な、何を?

「はぁぁ。名無しさんを!巻き込まない!」

兼続様の剣幕にびくりと肩が震える。

「あ、あの、“見たい”って言うのは?」

ようやっと、それだけを伝える。

「ほら。名無しさん、彩りの妖精がね?
裏山に来ているんだよ。
だからね?
戯れに行こうよ?皆で!
名無しさんのお弁当、食べたいな。」

“皆で”

その言葉に、掠めた…面影。
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