山椒魚
□肆
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※若干の戦闘シーンのため、血やグロ表現があります。ご容赦下さい。
no side
何故、飯田が店主と仲良く会話をしているのか?
それは数分程前に遡る。
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飯田は鱒二から渡された地図を見ながら走っていた。鱒二の手描きなのだろうが、それは実に見やすくて判りやすい。飯田は少し感心していた。
相変わらずこういうのうめぇな。
本人に伝えても、お世辞はいらないと呆れ声で云われるのが目に見えているのだが。
彼は満足そうに一つ頷くと、それを大切そうに服の衣嚢に入れた。
周りの風景が変わり、洋食店が近くなってきたのが判ると、彼はそのままゆっくり歩き始めた。無駄な体力を消費しないためだ。
勿論、敵がどこにいるのか気を配りながらである。そのため彼の足音はほとんど聞こえない。
すると近くの路地裏から小さな声が聞こえてきた。飯田は壁に背を合わせ、様子を確認する。
其処に居たのは4、5人の男。その手には銃を装備しているのが判る。
彼は瞬時に鱒二のいっていた敵だと察した。
おぉ、ビンゴじゃん!!満寿二の予想通りだな!
そんなことを心中で考えながらも意識は敵へと集中していく。彼は敵の前へ楽しそうに躍り出て、笑顔で声をかけた。
「アンタ等、面白そうなことしてるな。・・・オレも混ぜろよ」
突然現れた飯田の声に心底驚いたらしい男達が銃を構えるが・・・時すでに遅く。
彼は敵の頸をいとも簡単に掻き斬って見せた。流れるような手つきである。
彼は所謂戦闘狂であった。血を見ると楽しくなってしまうのだ。それが相手のであろうと、自分のであろうと。
飯田は小さく喉の奥で笑いながらも、彼等を逃がさず切り刻んだ。その所為で路地裏は紅く染まっていた。男達の顔は人かどうかすら判別がつかない。
彼はそれを見下ろすと、楽しそうな顔から一気に無表情になった。
「・・・元軍人っつってもこの程度か。なーんかつまんねぇなぁ。あーあ、満寿二がオレと戦ってくれねーかなぁ」
独り言を零しつつも、淡々と男達の衣嚢や所持物を探る。その行動は妙に手慣れている。
すると彼等の所持金と一枚の地図を見つけた。飯田はそれを自分の衣嚢に入れてから、洋食店に入った。返り血を浴びている所為で店主には驚かれたが。
そんな店主に笑顔で云い切る。
「なぁ、オヤジ。風呂貸してくれないか?」
こうして、現在に至るのである。
◇ ◆ ◇
それから数十分後、洋食店に鱒二が駆け込んできた。・・・5人の子供達を連れて。
鱒二は店内で楽しそうに会話をしている飯田と店主を見て、安堵してから若干呆れ顔をした。
「龍太、何してんの」
「一寸遅めの昼食?」
「・・・あ、そう。まぁ別にいいけど」
「お前も何か頼むか?」
「今はいいや。そんな気分でもないし」
鱒二は元気に走り回る子供達を眺めながら答える。飯田はただ、そうか、と残念そうな顔をしただけだった。
そんな飯田に店主が話しかける。
「お、龍ちゃん。そっちの人がアンタの友人かい?」
「そうだぜ。すっげぇ美人だろ!?」
「おう!ここらじゃお目に掛かれない別嬪さんだ」
「もう龍太!店主も乗らないで下さい」
「ははは、そりゃ悪かったな。・・・・・・子供達、助けてくれたんだろう?有り難うな」
「・・・いえ、お礼をいわれることではありませんよ」
二人が余りにも調子に乗るので、つい声を荒げた鱒二だったが、店主のお礼には静かに応えた。
店主はそうかい、と笑うと二人の雰囲気を察したのか奥に入って行った。
「で、そっちはどうだったの?」
「満寿二の予想通りだったぜ。路地裏見たんだろ?」
「・・・あれ矢っ張りお前か。俺思わず燃やしちゃったんだけど」
「別に良いんじゃね?証拠が残らないなら万々歳だろ。というかお前相変わらず絵上手いな。地図めっちゃ判りやすかった」
「お世辞でも嬉しいよ。けど、それより他に報告があるだろ?」
鱒二の呆れ顔放たれた言葉に、飯田は一つ頷き衣嚢から先程手に入れた地図をカウンターの上に置いた。
それには此処から少し離れた山岳地帯が描かれており、山間の私有地に赤い×印と『幽霊の墓所』と走り書きされていた。
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