山椒魚
□終章
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※主人公がCP名とか出してます。苦手な方はスクロールで対処していただけると助かります。
side 鱒二
5人の子供達を信頼出来る孤児院に預けたその次の日、俺は織田君が死んだという報告を受けた。
龍太の所で泣いておいて正解だったかも。それにしても、歳を取ると涙腺が緩くなってしまっていけないな。
確かその夜だったと思う、太宰君が俺の部屋にやって来たのは。
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side 太宰
私はポートマフィアを出る前に、自分の師匠である鱒二さんの部屋を訪れていた。夜遅いにも関わらず、彼はいつも通りに出迎えてくれる。
部屋に入ってから私は早速本題に入った。
「・・・師匠、話があります」
「うん、何?」
「ポートマフィアを辞めます」
「・・・・・・そっかぁ」
私の言葉に、彼は少し間を開けて小さく苦笑しただけだった。もしかしたら予想がついていたのかもしれない。鱒二さんは頭の回転が早い人だから。
「理由は織田君の件、で合ってる?」
「・・・はい」
「判った。・・・君の退路は、こちらである程度確保しておく。他にしてほしいことはあるかな?」
鱒二さんは手早く構成員たちに連絡を回し始めた。
如何やら本当に私を逃がそうとしているらしい。相変わらず甘い人だ。何でこの人がマフィアなのだろう?何度も同じことを思った。
「止めないんですか?」
「うん、止めないよ。君が決めたことだからね」
「何で・・・」
「そうだねぇ、俺が君の師匠だからかな?それでは駄目?」
彼は困ったように微笑んで頸を傾げた。この人の顔を見るのもこれで最後なのか、と考えると少し胸が痛んだ。
それを振り切るように話を変える。
「私に協力して大丈夫なんですか?」
「・・・一概に大丈夫とはいえないけど、死にはしないと思うよ。というか、俺のことは気にしなくていいから早く行きなさい」
「・・・師匠、今まで有り難う御座いました」
「君がお礼なんて珍しいね、明日は雨、いや雪かな?」
私の言葉に鱒二さんは心底愉快そうにクスクスと笑った。そうして優しく背中を押すのである。
「君は君らしく頑張りなさい。・・・縁が合ったらまた逢おうね」
私は部屋から出た。
普段からマフィアとは思えないほど優しかった彼。修行中も飴と鞭を上手く遣い、戦い方も作戦の立て方も上手な立ち振る舞いも凡て叩き込んでくれた。感謝してもしきれないような人。
そんな彼への想いを馳せながら、その場を駆け出した。
◇ ◆ ◇
side 鱒二
太宰君がポートマフィアを抜けるのに手助けをして何事もなく無事・・・・・・な訳がなかった。まぁ、当たり前である。太宰君共々これは裏切り行為なのだから。
「井伏鱒二、何か言い訳はあるか?」
「・・・別にないよ」
背中には壁、目の前には林太郎、横には彼の腕。所謂壁ドンという状態だ。
一体どこの少女漫画?展開は全然少女漫画じゃないけど。というか探偵社の社長さんにやってくれてもいいんだよ?君たちに因縁があるのは知ってるんだからね!鷗福嫌いじゃないし、寧ろ見たい・・・・・・。
必死に無表情を保ちながらも、頭の端でそんなことを考える。そうでもしないと平静を保てないんだ、察してくれ。
「・・・そう」
俺の反応がない所為か、林太郎は無表情のまま俺を一度解放した。彼のその表情を見るのは先代首領の頃以来で久しぶりだったので、少し躰が強張ったのが自分でも判る。
林太郎は俺を静かに見つめてから、話を始めた。
「幹部会を開いた。・・・皆、一様に裏切り者は殺せと云っている」
「そうだろうね、俺も同じ立場ならそういうだろう。それで、君は俺を如何したいの?」
真っ直ぐそう問えば、彼は少し間を空けてからまた口を開く。
「鱒二は殺さない。・・・殺すには君の能力は惜しすぎるからね」
「・・・本当にそう思ってる?」
「・・・何が云いたい」
「だって、それは林太郎の建前でしょう?」
そう云って少し頸を傾げれば、彼は一度押し黙った。
全く、彼は相変わらず俺に対して甘すぎる。幹部達の云う通りに俺は殺してしまえばいいのに。
・・・まぁ、そうなったら全力で逃げるけれど。
そんなことを考えつつ、再び口を開く。
「じゃあ如何するの?」
「部屋に閉じ込めさせてもらうよ。・・・期限は設けない」
「・・・判った。君がそう云うなら俺は受け入れるよ」
龍太に暫く連絡出来ないとは云ったし、種田さんには既に太宰君のことを連絡しているし、特にこれといった問題はない。
あるとすれば織田君のお墓参りに行くのが遅れそうなことかな?
俺はある一室に閉じ込められた。ご丁寧にも足には銀色の枷と鎖が付いている。
ぼんやりとした思考の中、林太郎の用意周到さに思わず笑ってしまった。
「あぁ、寒いほど独りぼっちだ」
俺は小さく呟いた。
end
→後書き&補足