山椒魚

□ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス
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※飯田が何となくキャラに冷たいですが、キャラヘイトではありません。










side 飯田


「すンませんでしたッ!」


「へ?」


武装探偵社の下にある喫茶店、『うずまき』にて、谷崎兄の悲痛な声が響く。
その一方、謝られた少年(中島敦というらしい)は驚いたような声を零している。
オレはその様子を実にぼんやりと眺めていた。多分、今のオレには何の表情も浮かんでいない筈だ。
理由?・・・集中してるからじゃねぇの?満寿二にも、お前集中すると表情消えるよね、って云われたしな・・・。

却説(さて)、オレが何に集中してるかっていうと、まぁ、ひたすら中島敦を眺めている。正しくは中島本人じゃなくて中島が大切そうに所持してる青色のちっさい御守りだ。
どうにも見覚えがある。そう思ったオレは衣嚢(ポケット)を探り、同じようなちっさい御守りを手元に出した。ちなみにオレが持っているのは赤色だ。
・・・矢っ張り、色こそ違うけど同じものだよなぁ?

ざっと見た感じ縫い方とか、糸とか、布地とか同じに見える。・・・ということは、中島が持っている御守りは(どこで接触したのかは知らないが)満寿二があげたものだろうと思われる。満寿二はそう簡単に他人に自分のものを渡したりしない。
つまり、中島敦は満寿二のお気に入りってわけだ。

ここで話は少しズレるが、満寿二とオレが気に入る人間の傾向は驚くほど似ている。オレ達の個人の性格とかは全く似ていないが。
あー、ならオレも中島敦を気に入る可能性が高いってことか?

中島が入社試験で見せた、爆弾に覆い被さる姿には確かに肝を冷やしたが、そういう莫迦は嫌いじゃない。寧ろ好きな部類に入る。良く考えると、オレは既に中島敦を気に入り始めているのだ。
脳裏で満寿二が悪戯っぽく笑った気がした。


「じゃあ、私と飯田さんは?」


「・・・飯田さん?」


太宰の声で思考の海から浮き上がる。何事かと思ったが、探偵社恒例の職業()てだろうと直ぐに納得した。
オレは中島を安心させるように声を掛けた。


「あぁ、オレの事だぜ。・・・飯田龍太だ、宜しくな」


「宜しくお願いします、飯田さん」


「・・・龍太でいいぞ?」


「はい、判りました!じゃあ僕の事も敦って呼んで下さい」


「ん、了解」


「「「「!?」」」」


中島・・・否、敦がオレの事を苗字で呼ぶ事に少し違和感を感じたので、名前呼びを頼んだら何故か周囲に驚かれた。
いやいやいや、こっちが吃驚だわ!!まぁ、でも良く考えると探偵社内にオレを名前呼びする奴って乱歩くらいだよな・・・。あとは(探偵社員じゃないけど)満寿二くらいか?


「で、敦。オレと太宰の前職は何だと思う?」


「うーん・・・」


『想像もつかん・・・・・・!』
何だか悩んでいる敦の心の声が聞こえた気がして、オレは小さく苦笑する。


「無駄だ、小僧。武装探偵社七不思議の一つなのだ、こいつと飯田さんの前職は」


その後の、懸賞金七十万という言葉に乗せられた敦はオレと太宰の職業を必死で中て始めた。下手な鉄砲も何とやら、とは云うがこの調子では中たりそうにない。


「うふふ、降参かな?じゃ此処の払いは宜しく」


「あっ」


「おい」


敦に向かって、ご馳走様、などとほざく太宰を比較的軽く殴る。ドゴって音がした?気のせいだろ。
というか、コイツ何で後輩に(たか)ってんだ。満寿二にバレたら絶対怒られるぞ?


「敦、払わなくていい。会計は太宰の給料から引いとくから」


「飯田さん、非道い!!」


「自分より年下に払わせようとした奴の方が、よっぽど非道いと思うけどな?」


オレが判りやすい作り笑顔でそう云うと、太宰が口籠った。満寿二とのCP戦争で口論は慣れているから、このくらいの言い包めはお手の物だ。


「あの、龍太さん。ありがとうございます」


「ん?あぁ、気にすんな。太宰の事は基本無視でいいから」


律儀な奴だな、と敦の頭を撫でて癒されていると太宰から本日二回目の飯田さん、非道い!!を云われた。
オレはそんな太宰を鼻で笑う。

その後、谷崎兄の携帯に依頼の連絡が掛かってきてオレ達は急いで探偵社に戻る事となる。





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