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□藤と山姥切国広
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※名前変換無し
 ただの小ネタ





ある日、審神者さんを探している最中のこと。


「もう切国くん!いい加減その布外してよ!!」


「・・・嫌だ」


「その布汚れてるでしょ?今日と言う今日は洗濯するからね!!」


「・・・・・・絶対に嫌だ。写しにはこれがお似合いだろう」


「切国くん!!」


何故か二人が廊下で言い争いをしていた。

・・・何、この混沌(カオス)

呆然としていると二人の言い争いが布の引っ張り合戦になり、最後には追いかけっこになっていた。
必死で追いかける審神者さんと、追いつかれまいと死ぬ気で逃げる兄弟・・・・・・。
あまりに突然のことで状況を呑み込めない私に、清光が笑いを堪えながら話しかけてきた。


「ふっ、藤は、これ見るの初めてだっけっ?」


「えぇ、そうですね。・・・初めて見ます」


「あー、そう言えば普段の切国って、藤にそういう所見せないように気を付けてるもんね」


「?」


暫くして笑いがおさまったのか、うんうんと頷きながらそう言う。私は何の事だか分からず、つい首を傾げる。
すると、今度は後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「あれは本丸名物、『山姥切国広の布剥がし』だぜ」


「おや薬研。・・・・・・ぬ、布剥がし、ですか?」


「おう。切国の旦那はいつもあの襤褸を纏ってるだろ?で、土埃とかで汚いから洗濯しようとするんだが・・・」


「兄弟が拒否する、と」


「そう言うこった」


なるほど、そういうことだったのか。
薬研による説明だと、他本丸では審神者さんだけで剥がすのではなく、兄弟――堀川国広が剥がすことの方が多いんだとか。
うーん、あの兄弟は世話焼きで働き者だからなぁ。何となく分かる気がする。


「ところで藤は何か用事があったの?」


「はい。姫に本日の茶菓子を届ける途中でした」


「へぇー、そうだったんだ。・・・ちなみに今日のは何?」


「クッキーですよ。ココアを混ぜたやつもあります」


「俺もそれ食べたい!」
「俺っちもそれ食べたい!」


清光と薬研の無邪気な声が綺麗に重なった。その様子に私は小さく笑う。
ホント仲良しだなぁ。


「台所にまだ置いてありますよ」


それを聞くや否や、二人は競うように走って行く。何だか可笑しな光景だ。
二人を見送ってから審神者さんの部屋に行こうとすると、審神者さんは既に戻って来ていた。短刀もビックリの機動力だね!


「姫、お帰りなさい。・・・兄弟は捕まりましたか?」


「それが全然、って藤!?」


「はい、藤で御座います」


私が声をかけると審神者さんは酷く驚いたようだ。この感じは私という存在に気が付かなかったのだろう。


「もしかして、そのクッキーって今日のおやつ?」


「正解です」


「わぁーい!!藤の手作りお菓子だぁ!!」


「そんなに喜んでもらえると作りがいがありますね」


「だって美味しいし。・・・あっ!」


「どうしました?」


クッキーに喜んでいた審神者さんは、何かを思い出したかのように声をあげる。そして少し申し訳なさそうに口を開いた。


「藤なら切国くんの布外せるんじゃない?」


「え!?」


ここで何という無茶振り。確かに兄弟ではあるが、流石にそれはないだろうに。
そう思うのだが、可愛い女の子に頼まれては断るのもちょっとなぁ・・・。と考えると、結局仕方なく受けるしかないのである。
私って本当にチョロイ・・・。


「・・・あまり期待はされないで下さいね?」


「うん、分かってるよ!」


こうして私は、審神者さんから見事逃げ切った兄弟を探すことになる。



――――――――――

―――――――

―――――


兄弟を探し始めて数分、大きな岩の影に彼が潜んでいた。
私はついため息を吐く。


「こんな所にいたんですね、兄弟」


「・・・・・・」


「ほら、もう戻りましょう?」


「嫌だ。・・・襤褸を剥がされるのは困る」


私が頼まれたことも、何となく気が付いているのだろう。意地でも布を取る気はなさそうだった。・・・これは説得するのに骨が折れそうだ。


「そう言えば、兄弟は他にも布を持っていませんでしたか?」


「あったが、残りも全部洗濯されているぞ」


「そうですか」


洋服箪笥の布全部か・・・。あれ結構な量があったと思うんだけどなぁ、審神者さん行動力も本当に凄い。
何を言っていいのか分からず、黙ること数十秒。一つだけアイデアを思い付いた。


「ではその布の代わりの物があれば、その襤褸は外しますか?」


「・・・・・・出来れば被れるものがいい」


「分かりました。少し待っていて下さい」


兄弟の返答に私は駆け足で部屋に戻った。


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