企画(お話)

□2018年バレンタイン
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※時間軸は鶴丸さんが仲間になったあたり。





2月13日の早朝。
私は何故か審神者さんの部屋に呼ばれていた。


「姫、何かあったのですか?」


「うん。ねぇ藤、明日って何の日か知ってる?」


「明日ですか?・・・・・・あっ」


明日は2月14日。世に言う『バレンタインデー』だ。
本来はローマ司祭の"バレンタイン"という人が殉職した記念日なのだが、日本ではお菓子会社の戦略で女性が男性に愛の告白をする日として有名である。
ちなみに海外だと男性から女性の方が多かったりするらしいのだけど。

閑話休題。

私の反応に審神者さんはとても重々しく頷いた。


「そう、バレンタインだよ」


「・・・では姫はバレンタインのことで何かお悩みなのですね」


これでもし『好きな人ができたから告白に協力してほしい』とかだったら、清光あたりが黙ってはいないだろうけど。
ゴクリ、と固唾を飲んで審神者さんの言葉の続きを待つ。彼女は少し恥ずかしそうに口を開いた。


「本丸の皆にね、チョコレートを作りたいの。けど私って家事が壊滅的でしょ?・・・だから藤に手伝ってもらえないかなぁと思って」


「なるほど、そういうことでしたか。姫がお望みなのであれば私はいくらでもお手伝いいたしますよ」


「えっ!?本当にいいの?」


「もちろんです!美味しいチョコレートを作って、皆をビックリさせましょうね」


「うん!ありがとう!!」


審神者さんの嬉しそうな笑顔に、私もつい口元を緩めた。



――――――――――

―――――――

―――――


2月14日、バレンタイン当日。
皆がお昼ご飯を食べ終わったあたりで、審神者さんと私でキッチンを占領した。今回は(私以外の)男子禁制、立入禁止である。


「それでは始めましょうか」


「はい!お願いします、藤先生」


「・・・あの『先生』はやめませんか?何だか落ち着きません」


「はーい!」


審神者さんが片手を挙げて元気に返事をした。年相応に可愛らしい仕草と表情である。私は一つ頷いた。


「ええと、私は今回クッキーを作ればいいんだよね?」


「そうですね。クッキーであれば沢山作れますし、単純な作業なので難しいことはないと思います」


「そっか、わかった!」


「ふふふっ、気合が入ってますね」


「そりゃそうだよ!・・・私、皆に美味しいって言ってもらえるように頑張るから」


「はい!一緒に頑張りましょう」



◇ ◆ ◇


一方その頃。
キッチンに主直々に『立入禁止令』が出された刀剣男士たちは、何故立入禁止になったのか分からず各々首を傾げていた。


「一体大将は藤のお嬢と何してんだ?」


「厨を使っている、ということは料理じゃないのか?」


「・・・はわぁ、何だか甘い匂いがします」


「えぇー!!?何それ気になる、中覗きたーい!!!」


「こら鯰尾!」


上から薬研、骨喰、五虎退、鯰尾、一期の粟田口が入り口でわちゃわちゃと中の様子を探っており、


「あの人、確か料理はできないはずでしょう?」


「へぇ、そうなのか」


「・・・うん。でも今回は藤がいるし、大丈夫。だと思う」


左文字の二振り(ふたり)と鶴丸が不思議そうに目を丸くして話し合う。



「カカカッ!主殿と兄弟の料理か、実に楽しみであるな」


「・・・まぁ藤の兄弟が一緒にいて間違いはないだろ」


堀川派の二振りの兄が盛大に、弟が静かに笑えば、


「何だぁ?俺らは部屋で大人しく待ってればいいのか?」


「そうだね。・・・というか兼さんはこれから僕と内番でしょ!主さんたちの料理が終わる前にやっちゃおうよ」


「げっ!忘れてた」


新選組の土方コンビがいつもの漫才を繰り広げ、馬小屋の方向へ足を進めていた。
ちなみにだが、大倶利伽羅は既に自室に引っ込んでおり、愛染と今剣は鍛錬場で手合せの真っ最中だったりする。
そんな和気藹々とした空間に、よく知った声がかかった。


「あれ?皆こんなとこで何してんの?」


「わぁー!すっごく良い香りー」


加州と乱の女子力カンスト組だ。
加州が小さく首を傾げながら尋ねると、鯰尾を押さえていた一期が苦笑しながら口を開いた。


「今、厨が立入禁止になっておるのです」


「へっ!?立入禁止?何で??」


「兄弟と主が何か作っているらしい」


「何か?・・・・・・あ、そういうこと」


「んん?あ、そっか今日って確か・・・・・・」


二振りは今の言葉で状況を察したらしく、納得したように頷いていた。
その動作に今度は宗三が緩く小首を傾げて見せる。


「今日は何かあるんですか?」


「えっとね、今日は『ばれんたいんでー』って言って女の人が好きな男の人に愛の告白をする日なんだって」


この前主がそんなこと言ってた、と加州が告げる。


「その時に手作りのお菓子を渡すのが一般的らしいよ。何て言ってたっけ、えーっと、確か・・・あっ、『ちょこれーと』だったかな?」


「それじゃあ大将たちは、誰かに告白する用の『ちょこれーと』ってお菓子を作ってんのか?」


乱の言葉を受けた薬研の発言に、一瞬空気が固まった。

ちょっと待て、好きな男子に告白だとっ!!?

つまりそれは主たる審神者の少女と、加藤国広に好きな人がいるということに・・・。
一体、いつ、どこの馬の骨が、あの二人を、誑かした?
その場にいる全員が一気に殺気立つ空気を感じ取った加州は、慌てて言葉を付け足した。


「あっ、でもっ最近は友達とか、お世話になった人にも渡すみたいな傾向があるって主も言ってたし!!」


その言葉で落ち着いたメンバーを、ほっと安堵の息を零しながら加州は目を瞑った。

危ない危ない、うっかり本丸が壊れるところだったぁー・・・。




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