小説

□序章-プロローグ-
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4月、多くの人々がこの月を以て新生活をスタートする。


僕、瀬戸口慎弥もそれにそぐわなかった。




自由な校風にもかかわらず、偏差値がそこそこ良いことで有名な、私立白嶺学園高校。


今日はその入学式だ。




新しい校舎に新しい制服を身にまとった生徒たち。


中学とは違うその景色に誰もがそわそわしている。


僕もそのうちの1人だ。


しかし、僕はここに居る人たちとは違う意味でそわそわしている。




実を言うと、僕はつい最近まで病院に居た。




中学を卒業し、白嶺学園高校に合格した僕は、僕と僕の家族、そして幼なじみとその家族で山の祭りに参加したらしい。


車で2、30分程の帰り道、後ろから突っ込んできたトラックが、僕らが乗っていた車と衝突して、運悪く僕の頭に当たり記憶...というより思い出と言うべきか。

今まで関わってきた人や今までにしたことの全ての記憶を失ったそうだ。




らしい、とか、そうだ、だとかを使うのは、事故のときの記憶も僕にはないからであって、これは全て幼なじみだと言う同い年くらいの女の子から聞いた話だからだ。


そして、そんな中、中学の同級生にあったりしたら面倒なことこの上ないので、軽く変装のつもりでコンタクトだった僕は今、メガネをかけている。




(はぁ、憂鬱だ。僕はどんな人でどんな生活を送っていたんだろう…)


そう思いながら僕は、重たい足を1歩ずつ進めて行くのだった。

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