短編集
□兄妹
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ア「今日のヒーローは、見事一軍復帰戦で8回無失点、勝利投手福井投手と、逆転タイムリーと華麗な守備で福井投手を助けた藤本選手の御二方でーす!!」
マツダスタジアムに響き渡る歓声とファンの視線の先には、福井と麻樹の姿が。
「『ありがとうございます。』」
あれからひと月程経って、福井は一軍に戻って来た。
そして今日その復帰戦で、見事なピッチングで完封勝利を収めた。
味方の援護としては麻樹の攻守が今日は冴え、それで二人で揃ってのお立ち台が現実となった。
二人とも、笑みを浮かべてインタビューを受ける。
ア「怪我との戦いもありましたが、ファームではどんな気持ちで過ごされていましたか?」
『僕がファームに行った時に、麻樹から電話が来て挑発されたので、そこでイラッと来て絶対に1日でも早く戻ってやるって思って、毎日やってました。』
「福井さんは素直じゃないのでこう言ってるんですけど、内心電話が来てめちゃくちゃ嬉しかったんだと私は思ってます。」
ベシッ(頭を叩かれる)
「いたっ!」
一連のやりとりに、マツダスタジアムは笑いが起こる。
ア「本当に仲良しですね??」
『みんなそう思ってると思うんですけど、実際そんなに仲良くないです。口ききません。』
「ほら聞きました?今の、素直じゃないですよね??安心してください、実際はめちゃくちゃ仲良しです!」
ア「そんな藤本選手。今日は攻守共に大活躍でしたが、やはり仲良しな福井選手の復帰戦という事もあり、特別に気合が入っていたってのもありますか??」
「そうですねー。久し振りに福井さんが戻って来てやっぱり嬉しかったですし、自分自身も調子が良かったので、何とか勝ちをつけてあげられたので良かったです!あと、試合前に福井さんが、今日打ったらごはん奢ってくれるって言ってくれたので、それもありますね!!」
ア「……だそうですが、何をご馳走しましょうか??」
『ちょっと何言ってるか分からないですね、そんな約束した覚え無いです。』
「鰻食べたい!!」
久し振りに繰り広げられる2人のやりとりに、ファンもアナウンサーも笑いがこみ上げる。
今やファンの間でも有名な、この2人のやりとり。
心強い2人が戻って来た。
それはファンにとっても、チームにとってもプラス。
今年こそ目指すは優勝。
ア「……今日のヒーロー、福井投手と藤本選手でしたー!!」
「……おかえりなさい!」
『おぅ。』
---次の日---
33「麻樹〜、今日のスポーツ紙見た?」
「見てなーい。なんで?」
33「面白いこと書いてある。……これ!」
「……兄妹かぁ。笑」
9「あながち間違ってないよな。」
2「ファン公認って書いてある笑。」
14「福井さん、今日のスポーツ紙面白いですね。」
『兄妹じゃない……。』
12「でもこの福井さんの顔嬉しそう。」
31「ええ顔しとるやん。」
『………。(嬉しかったなんて絶対に言えない)』
今日の広スポの一面は
『福井&藤本の兄妹コンビ復活!!』
だったそう…。
嬉しがるヒロインと、恥ずかしい福井さん。
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福井さんとのお立ち台。
ここでもツッコむ福井さん、素晴らしい。
お立ち台でさえも素直になれない福井さん。
やっぱりヒロインのことが好きな福井さんでした。
でも最後は、おかえりと言われてただいま。と笑顔。
因みにこのあと、ちゃんと鰻を奢ってもらったヒロインでした。笑