短編集
□いつもの冗談で
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『……なみさんっ!!』
59「お〜麻樹、俺引退するわ。」
『……ほんとなんですね。』
59「もう球団にも迷惑掛けれないし、引き際だと思ってさ。」
『………っ。』
59「何でお前が泣くんや〜。笑」
『だって…なみさんがいなくなっちゃうなんて、あまりに急で、訳分かんなくて…。』
((ぽんぽん))
59「……ありがとな。俺の為に泣いてくれるなんて、俺は幸せ者だよ。」
『まだまだ、なみさんなら野球出来ますよ!だから、だから辞めちゃうなんて………言わないでくださいっ。』
『例え理由が病気だったとしても、なみさんなら絶対に勝てるから….!!今までだって、ずっとそうしてきたじゃないですか!!私はっ、私はーー……!!』
59「麻樹。」
『っっ!!?』
((ぎゅーーっ))
59「ほんとにありがと。でも、もう決めたから。……俺さ、ほんとは前から何度も辞めようと思った事があったんだ。でもその度に、今みたいに麻樹はまだ出来る!まだ一緒に野球やりましょう!って言ってくれてたろ?お世辞かもしれないけど、俺はそれ聞いて、辞めずに今までやってこれたんだ。」
59「お前のおかげでここまでやってこれた。……ありがとうな。」
『っ……こんなベタベタにお礼言うなみさんなんて、私の知ってるなみさんじゃない……。そんななみさんは大嫌いです。』
59「ははっ、麻樹に嫌われるなんて勘弁だな。」
『……だったら、いっつもみたいに冗談だよ。って笑って言ってくださいよ。』
59「今日ばっかはそれは言えないなぁ。……ほんっと、最後くらい言う事聞いてくれって。笑」
『っ……!!』
この時のなみさんは、今まで見てきた中で1番優しくて、でも1番寂しげな表情をしていた。
「最後くらい。」というそのフレーズに、改めて引退するという事実を突きつけられて、また涙が溢れる。
選手であれば、誰しもがいつかは決めなければいけない『引退』。
また1人、こうしてプロ野球界から姿を消していく。
非情だけれども、これが現実だ。
……なみさん。
最後に1つだけ、1つだけ、我儘を聞いてくれますか?
私はーー…………、、、
最後の我儘の内容は、ご想像にお任せします。
なみさんの引退、ファンの前で最後のお礼を言う姿を見て、涙涙涙。
大好きな選手です。
とっても寂しいけれど、まずは本当にお疲れ様でした。