コミュ障彼女と警戒彼氏

□やってきたのは、コミュ障少女
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「ぷふぁ……。」

一通りジョディさんにからかわれて、赤井さんに睨まれて、やっと自分の(物になった)デスクに落ち着く事が出来た。

まず言いたい事は、初っ端から難が多すぎる!!

辛いよ。うん。


だってさ、ずっと睨まれながら爆笑されてるんだよ!?疲れるよ本当。


挙句の果てには、あと半年で日本に行く、だよ?

私日本人だけど、両親が亡くなってから行った事無いし、そもそも両親が亡くなったのが物心着く前だからどんな国かもあんまり覚えてないし。

多分、だけど向こうに多少親族が居るはず。

確か幾つか下に新一くんとか言う男の子が居た様な……?

私が最後に帰ったのが3歳の頃で、その頃生まれたてだったはず。



って事は、今頃高校生か。

青春真っ只中だな。
リア充だったら爆発してほしい((



あぁ、本当に前途多難すぎる。

てか、パパはこの事実を知ってるのだろうか。
知ってたら、態と私を日本に帰す為にここに配属させたって可能性もある。
そこまでして私を日本に帰す必要も感じられないけどなぁ。

もしかしたら私が知らない真実が、どこかに隠れているのかも。







「仕事だ。ここに入ったからにはきちんとこなせ。」

「……やり方。分らないんですけど……?」


ポイ、とデスクに投げられた書類と元々あったパソコン。おそらくこれで仕事しろって事なんだろうけど……。

目的わかんないし、何すれば良いのか言われてない。


あ、今溜め息吐かれた。

「え……っと、何を纏めれば良いんですか?
それさえ教えていただければ。」


良いよ、別に。
もう良いです。

これもコミュ障治療の一つだと思えば全然苦じゃないですし。別にぃ。(拗ねてる)


「今度の会議の資料だ。対象の行動を纏めろ。」

対象の行動、ねぇ。


残念ながら資料は二年ほど前からしかなかったので、詳しいプロファイリングは出来ないが、ある程度はまとめられそうだ。


この対象は、無差別殺人鬼を装って赤井秀一を殺そうとしたらしい。
この赤井秀一は、一時期組織に潜入していたFBI捜査官で、コードネームまで貰い、幹部との接触まであと一歩の所まで来た、と資料には載っていた。
狙撃が優秀で、組織にはシルバーブレットとして恐れられている、とも。


ん、待て。赤井秀一って……?

「赤井さん!?」

「何だ煩い。」

「何だじゃないですよ赤井さん組織に行ってたんですか?」

「そうだが。何だ?」


何だ、ってまぁ何でも無いんだけど。
ちょっと気になっただけ。

というかこの直ぐ口に出す癖があるから皆から嫌われていくんだよな。
治さなきゃ。

「そうね、新しく入ってきたんだもの。
知らなくて当然だわ。
シュウはFBIの中だけじゃなくて各所のスナイパー達には有名なのよ?
狙撃の腕は誰にも負けないんだから!」


そう語ったジョディさんは、とても誇らしげで、赤井さんの事を自慢に思っている様だった。

もっとも、同僚を自慢するときとはまたちょっと違う感じがしたが。


まぁ、私も一端の狙撃手だから、FBIに凄腕のスナイパーがいる、というのは知っていた。
だが、一緒に仕事が出来るとは夢にも思っていなかった。

し、こんなに目つき悪くて愛想ない人だとも思ってなかった。



それでも狙撃スクールの中では彼はまるで戦場の英雄扱いで、中には、彼を目指して練習に励むミーハーな男子なんかもいた。


だから、ちょっとした出来心で、

「ほぉー!!それは凄いですね!!ちなみに何ヤード位?」

なんて聞いてしまった。

「シュウ、貴方何ヤード撃てるの?」

「ジョディ、それ位にしておけ。
ソイツの資料が進まんだろう。」


結果。ジョディさんが怒られた。

ごめんなさいジョディさん。


でも、資料のまとめ、頭の中で終わってるんです。
あとはパソコンに打ち込むだけ。


多分この人は組織の人の中で一番変装術に優れている。
目撃証言に寄ると、白髪で老人とは思えない身のこなし。
ここから推測するに、中身は女だ。しかもモデル体型の。


となると、最後自殺してたのも偽装かもしれないな。

変装術に長けていたのなら、撃たれた場合の事も考えて血糊を体に仕込んでいるはず。
もしそうなら、変装を解くと同時に辺りに血糊を撒き自殺した様に偽装する事も可能だ。

もちろん、そんな事しなくても辺りのホームレスでも捕まえて、殺した後自分がしていた変装に血飛沫を加えれば完成だ。


ただ、この場合遺体が残っていなかった様なので組織に戻ったと見て間違ってない。
すなわちこの対象が取った行動は前者だ。

前者を取ったという事はあまり人殺しを好まないか、

――とある少年に何等かの言葉を掛けられ感化されたか。


実は、自殺(偽装)の前に対象は日本人の中学生の男女と接触している。

恐らく何等かの要因が働き、彼らに恩義を感じた、という所だ。



他の資料と統合して考えると、

今“彼女”は日本にいる。

そう考えて間違いないだろう。




私は対象の行動とは別にそうプロファイリングの結果をまとめ、姿が見えない赤井さんのデスクに一緒に提出しておいた。


「ふぁぁあ……。コーヒーでも飲も。
あの……。ジョディさん何か要ります?」

「え?ああ、私もコーヒーをお願い。あ、ブラックで良いわよ。」



私はコーヒーを淹れ、ジョディさんに手渡した後、机に突っ伏した。

「もしかして貴方……。資料もう終わったとか言わないわよね?」

「え?終わっちゃ駄目でした?あ、もしかしてまだ資料室に資料があって自分で取りにいかなきゃいけなかったとか?だったらごめんなさい作り直します!!」

「いや、そう言う訳じゃないんだけど……。まだ貴方が作業を始めてから30分ぐらいしか経ってないと思って。
私だったらあの分の資料をまとめるには2時間は悠に掛かるから。」


あぁ、びっくりした。
配属初日から何かやらかしたと思った。

いやもうやらかしてるっちゃやらかしてるんだけど。



私はジョディさんに見せて、と言われた資料を手渡し、カフェインでも打ち勝てなかった睡魔に意識を手渡した。
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